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健康

第14回 三朝温泉(鳥取県)「浸かってよし、飲んでよし、吸ってよし」の放射能泉

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■放射能泉は怖い!?

 温泉の泉質は、単純温泉、塩化物泉、硫黄泉など大きく分けて10種類に分類される。そのうちのひとつが「放射能泉」。温泉全体の数からいえば、放射能泉はごくわずかだが、名湯として名を馳せる温泉地は少なくない。

 放射能泉は、その名のとおり主要な温泉成分が放射性物質である。「そんな温泉に真っ裸で入っても大丈夫なのか」と心配になるかもしれないが問題ない。

「ラジウム温泉」「ラドン温泉」という言葉を聞いたことがあるかもしれない。放射能泉には、おもに「ラジウム」や「ラドン」が含まれている。少し専門的なことをいえば、「ラジウム」は放射性物質、「ラドン」はラジウムが崩壊したもので、常温ではガス状の物質である。

 これらはもともと自然界に存在する物質で、人体に影響を及ぼさない程度の微量の放射線しか出さない。しかも、湧出後はほとんどが空気中に飛散する。そもそも原子炉などで使われる核燃料物質とは、種類も放射線の量も異なる。

 放射能泉は、健康に効果的という説もある。微量な放射線によって身体に負荷をかけることで、逆に免疫力が高まったり、老化を遅らせたりするとされている。なかには、ガンに効くと評判の温泉があるほどだ。このように微量の放射線が、身体にプラスに働くことを「ホルミシス効果」という。

 たとえば、秋田県の玉川温泉では、「北投石」というラジウムを含む天然石の上で岩盤浴をすると、ガンが治ると評判になり、わらにもすがる思いの患者が全国各地から押し寄せる。

 放射能泉がガンなどの病気に効果があることは、科学的にまだ検証されていない部分が多いが、放射能泉に入ることでたくさんの入浴客が健康を取り戻してきたというのも、経験則からいえる事実の一面である。

 

■湯気を吸い込む「吸入浴」

 世界トップクラスのラドン含有量を誇る放射能泉が湧く三朝(みささ)温泉は、鳥取県を代表する温泉地。開湯が約850年前、平安時代までさかのぼる古湯だ。

 温泉街の中心にかかる三朝橋の近くに湧く「河原風呂」は、三朝のシンボル的存在。川原に10人ほどが入れる湯船がぽつり。混浴だが、簡素な脱衣所とすだれの目隠しがあるくらいで、周囲からはほぼ丸見え。開放感満点だ。

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 昼間は見物に訪れる観光客も多いが、夕方以降は、普段使いの湯として利用している地元の方でにぎわう。私が訪れたときも、常連さんが途切れることなく入浴していた。

 そんな三朝温泉には、ほかの温泉地ではあまり見られない独特の入浴方法がある。温泉を吸う「吸入浴」だ。温泉の湯気やミストを口や鼻から吸うのである。

 放射能泉に含まれるラドンはガス状の物質で、湧出後に空気中に拡散してしまうからだ。気体ということは、湯船に温泉が引かれて入浴客が浸かる頃には、ラドンのほとんどは大気中に放出され、それを体内に取り込めない。それでは、「ホルミシス効果」が期待できないのだ。

 しかも、ラドンは熱に弱い。放射能泉のほとんどは泉温が低いから、加温したり、循環濾過したりするとラドンが温泉から抜けてしまう。放射能泉は、とてもデリケートな温泉なのである。

 

■体内から健康に

 普通の入浴や飲泉でもある程度の効果はあるが、気体のラドンを身体に取り入れるには、湯気やミストを吸う「吸入浴」が最も適している。

 大正9年創業の老舗旅館「依山楼岩崎」には、ラジウム蒸気風呂という浴室がある。風呂といってもラドンを含んだミストが噴出されているだけなので、部屋の構造はサウナと変わりはない。

 深呼吸をして鼻と口からラドンが含まれた温泉ミストを思いきり体内に取り込む。鼻やのどの奥が潤っていく感じ。これまで味わったことのない新鮮な感覚だ。

 「浸かってよし、飲んでよし、吸ってよし」の放射能泉の気持ちよさを、ぜひ一度体験してみてほしい。

 

 

 

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