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- 社長の右腕をつくる 人と組織を動かす
- 第136回 『才子よりも、君子をめざせ』
組織の中のポジションが上がれば上がるほど、
スキルよりもマインドが需要になってくる。
スキルというのは、仕事の技能や能力。
それに対し、マインドとは、心の能力のことである。
私自身、若い頃を振り返ってみると、
スキルを重視し過ぎたという反省がある。
20代の頃はとくに、「仕事さえできればいい」という、
今から思えば鼻持ちならない人間だった。
周囲に対する配慮が足らず、
自分のスキルアップばかりを考えていた。
外資系によくいる嫌なタイプの人間だったと思う。
幸いにも、30歳を過ぎたあたりから、自分の誤りに気づいた。
スキルは当然必要だが、
マインドのないスキルは力を持たないということが、
部下を持つ身になって身に沁みてわかるようになったのだ。
もっと早くそれに気づいていれば、
仕事はもっとスムーズにいっただろうし、
磨いたスキルももっと活かせただろう。
頭が切れて仕事ができる人、技能があって仕事ができる人を「才子」という。
つまり、スキルの優れているビジネスマンである。
スキルだけでなく、人間性が豊かで人間的な香りのある人を「君子」という。
「できる人」と一目置かれるだけでなく、共感・協調・尊敬といった
マインドの部分でも、人を惹きつける力がある。
技能もなく、人間性も平凡な人は「小人」という。
会社も、この3種類の人がいて成り立っている。
この中で、会社を成長させる力を持つリーダーになれるのは、「君子」のみである。
「才子」はいわば職人であり、人を束ねることは不得手とする。
「小人」は問題外だ。
スキルだけでなくマインド面での修行・修練・勉強も、
若いうちからやっておくに越したことはない。
そのためには、よく本を読み、人の話に耳を傾け、
他の人が何を考え、何を感じているのかを想像することだ。
相手の立場に立って考えることは、
意識すれば誰にでもできる。
「リーダーを目指そう」という話をすると、
若い人たちは、「自分に関係ない」という顔をする。
「まだ新入社員だから、そこまでは考えられない」、
「部下はいないから」・・・というわけである。
しかし、それは間違いだ。
リードする対象は部下でなくてもいい。
仕事をリードしてもいいし、同僚をリードしてもいい。
あるいは、
周囲の雰囲気を盛り立てることもリードのひとつだろうし、
また、上司を説得することもリードといえるだろう。
肩書やキャリア、部下のあるなしではない。
要は、気持ちのあり方次第で、
誰でもリーダーになれる可能性をもっている。
おそらく、「リーダー」という言葉を聞いて皆さんが
最初にイメージするのは、課長や部長などの管理職だろう。
それが、勘違いのもとなのである。
そもそも、マネジャー(管理者)とリーダー(主導者)では、
メンタリティが違う。
マネジャーは、現状を受け入れることから始め、そこに改善を加えていく。
対前年比◯%アップ…というように、こつこつと実績を積み上げていく。
これに対してリーダーは、現状を否定し、新たなことに挑戦しようとする。
マネジャーを「改善型」とすれば、リーダーは「改革・変革型」と
言うことができる。
また、マネジャーは、人や金、情報などの経営資源を、
上手くやりくりしながら仕事を進める。
では、リーダーはというと、こうしたやりくりに加えて、
人の心を燃やす力がなければ務まらない。
人を駆り立て、方向性を示し、その方向に人々を導くのが、
本来のリーダーのあり方だ。
そしてもう一つ、大きな違いがある。
マネジャーはリスクを回避しようとするが、リーダーは、
ときには「計算されたリスク」を覚悟で打って出る
技量と度量を持ち合わせていなければならない。
では、「計算されたリスク」とは何か?
ビジネスは、タイミングが命である。
新商品は、競合他社よりも早く売る出す方がよい。
先行有利にもっていきたいからだ。
あるいは、他社との提携や合併にしてもそうだ。
こちらの条件が有利なうちに、
また双方の利害が一致しているうちに、
タイミングよく決断しなければならない。
前例のないことをやるとなれば、当然、リスクが伴なう。
それを承知のうえで、さらにどんなリスクなのかを予測し、
それによって起こる可能性のあるデメリットを計算したうえで、
あえて敢行する。
それが、「計算されたリスクを覚悟で打って出る」ということだ。