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第104話 中小企業の事業承継(7)

あなたの会社と資産を守る一手

絶対にうまくいかない事業承継の二つ目は、承継する会社が粉飾決算、悪意ある経理操作、融通手形などを行なっているケースです。

粉飾は財務内容をじっさいより良く見せることで、財務内容を故意に悪くし利益を減らす脱税や、融通手形も同様に事業承継を困難にします。そして、オーナー社長はこれらのことについては絶対に他者に話しません。経理担当がちゃんと業務をこなしている会社であればすべてを経理担当が知っていますが、経理を社長自らが管理している場合、オーナー社長の突然の死による事業承継ではやっかいなことになります。

もっとも、ばれないレベルで財務内容を良く見せるにしても、悪くするにしても高いレベルの財務知識が必要なため、経理担当という実状を知る人が会社にいることが多いのでたいていは問題になる前に「承継しない」という選択を選ぶことになります。ただし、オーナー社長が高度なレベルで財務を理解して、他の誰にも知られずにこれらの経理操作をみずからおこなっている場合はやっかいです。もっとも、銀行にいたときも企業再生の現場にいたときもそのようなオーナー社長には数えるほどしかお会いしたことがありませんでしたが。

そこで、現実的にはどんなケースでこれらが問題になるかというと、融通手形が代表的、一般的な例になります。融通手形には高度な財務知識はいらないからです。融通手形をしている会社のオーナー社長が突然死亡した場合、会社は数ヶ月で死を迎えます。当然ながらそのような会社を承継してはいけません。

まず、融通手形とは何かと言うと、じっさいには商取引がないのに手形を振り出し、手形割引というかたちで銀行などから資金の融通を受けるものです。複数会社間でお互いに手形を融通しあいながら行なわれることが多く、その場合は手形の期日は同一日、金額も同じくらいの金額となるケースがほとんどです。

 

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複数会社間で融通手形をしていた場合、オーナー社長の死後、後継者が決まった段階ですぐに手形を融通しあっていた会社の社長が「亡くなったお父さんと会社のことで重要な話があるのだけれど」などと話をもってきます。一般的には承継者が銀行債務の保証人になったと思われる後に来ることが多いです。

たいていは融通手形をしている会社が2社であれば2人で、3社であれば3人の社長が顔をあわせ、「最初はお父さんに頼まれて手形を振り出した。しだいに金額も増えて相互に手形を貸し借りするようになった」と話をしてきます。承継者である新社長は銀行の保証人にもすでになっているため引くに引けず、この融通手形を継続することになります。

もちろん抜け出す方法もあります。融通手形の金額をじょじょに減らしていくことなのですが、複数企業で手形を融通しあっている場合、自分以外の会社もそれができるかどうか試されることになり、けっきょくは多くで破たんになります。

どんなケースでも会社の実状をみきわめないと事業承継してもたいへんなことになります。

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