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社長業

第17回「感性とは自分と同じところを見つけること」

繁栄への着眼点 牟田太陽

 「多様性の時代」とは皆口では言うが、実際に「多様性」の意味を理解して日常の中でも経営の中でも行動している人は少ない。
 特に日本人には苦手な分野だ。日本人は昔から、「画一性」を目指してきたからだ。村社会の中で、「目立たぬように」と息をひそめ生きていかなければならなかった。目立つもの、変わったもの、はみ出たものは嫌われ、村八分とされてきた。いまでもそれは1ミリも変わらない。毎年のように学校で起きているいじめ問題がそれだ。
 今回のコロナ禍の中で一層強く感じた。
 コロナが起こした一番大きな問題は「分断」だ。国家間の往来、県境をまたいでの往来、仕事のやり方、人との接触、考え方…全てを分断してしまった。
 人はそれぞれいろいろなモノに対して考え方の強弱がある。それが多様性だろう。コロナ禍の「自粛」一つとっても人によって考え方は違う。普段と変わらず生活する者、家から一歩も出ない者、完全リモートワークの者、半分リモートワークの者、変わらず出社している者、営業を完全に自粛する会社、半分自粛している会社、全くしていない会社、自粛の下、いろいろな会社が存在した。「要請」と「強制」は違う。もちろんインフラに関わる会社は止めるわけにはいかない。人によっても、会社によっても、それぞれが自分の正義、自社の正義を持っている。その中で出てきたのが、自分の正義を相手に強制する行為だ。
 自粛警察やら、他県ナンバーの車に対するあおり運転やらは極端な例だが、一般企業間のやりとりでも、2月の段階から、「お前の会社はまだ自粛をしないのか」などと相手先にクレームを入れる者もいたという。その考え方、行動は多様性とは程遠い。
 今一度言うが、人はそれぞれいろいろなモノに対して考え方の強弱がある。
 私が入協したときはまだ「先輩が気づく前にこちらから大きな声で挨拶をする」という風潮が世間ではあった。私も世代的に、その考え方に違和感など持ちもしなかった。しかし、それももはや時代遅れだろう。相手が目の前にいるのにチャットで挨拶する世代がいるのだ。
 社長によっては、金遣いの強弱も違う。牟田 學は金遣いを惜しまない人だ。個別相談に来られた人を必ず食事に連れていき、食事代を絶対に自分で出す。社員に対しても、出張のたびにお土産を山のように買ってきて配り、都内で講演する際はホテルのケーキをこれまた山のように会社に買って帰ってくる。そういう社長もいれば、自分のためだけにしかお金は遣わない、極力お金は遣わないという社長もいるだろう。
 社長として投資の強弱もある。「金利が安い時に借りて投資しないと損だ」という社長もいれば、「極力借金はしない」という社長もいるだろう。積極的、消極的など、行動力の強弱もある。これは社員ならまだしも、社長であるなら消極的よりも積極的でなくてはいけない。生きていけない。
 社長は、一人の人間に全てを求めることをしてはいけない。強制をしてはいけない。
 人はそれぞれ顔が違うように、強弱も能力も得意分野も違う。「こんな簡単なことが、何故出来ない」と嘆いても仕方がない。人間は自分と違うところばかりに目が行ってしまいがちだ。しかし、これからの社長はそれではいけない。社長の感性とは、相手の中に自分と同じところを見つけることだ。
 「何故出来ない」と嘆く前に、出来ないところを個性と捉えて、出来るところを誉めて伸ばす。これがマネジメントであるし、「多様性」というものだろう。そうすれば、全ての人の「人生の幸福度」はもっと上がるはずだ。
※本コラムは2020年8月の繁栄への着眼点を掲載したものです。

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