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経済・株式・資産

第41話 仮差押・差押をあまくみてはいけない

あなたの会社と資産を守る一手

仮差押・差押をあまくみると破たんする。
 
実際、預金や不動産に仮差押・差押がされた場合、その差押をしてきた債権者と話をつけて解除すればいいだけだと思っている経営者はたくさんいる。
 
税務署が不動産を差押えるケースや、銀行や一般の会社が差押えるケースなどさまざまだが、「経営者の預金にたいする差押だから会社には何の影響もないだろう」だの、「差押えしてきた人と話をつけるから大丈夫」だのといった言葉がかえってくるたびにがっかりした気持ちになる。
 
実は、仮差押・差押はあまくみることができない。これを使えば相手を破たんさせることもできてしまうのだ。
 
その理由が銀行取引約定書の「期限の利益喪失」という条項に書かれている。
 
 
―銀行取引約定書第5条第1項(期限の利益の当然喪失)―
 
(1)甲について次の各号の事由が一つでも生じた場合には、乙からの通知催告等がなくても、甲は乙に対するいっさいの債務について当然期限の利益を失い、直ちに債務を弁済するものとします。
1.破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、
  会社整理開始もしくは特別清算開始の申立があったとき。
2.手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
3.前2号の他、甲が債務整理に関して裁判所の関与する手続を申立てたとき、
  もしくは弁護士等へ債務整理を委任したとき、または自ら営業の廃止を
  表明したとき等、支払を停止したと認められる事実が発生したとき。
4.甲または甲の保証人の預金その他の乙に対する債権について仮差押、
  保全差押または差押の命令、通知が発送されたとき。

 
なお、保証人の預金その他の乙に対する債権の差押等については、乙の承認する担保を差し入れる等の旨を甲が遅滞なく乙に書面にて通知したことにより、乙が従来通り期限の利益を認める場合には、乙は書面にてその旨を甲に通知するものとします。
ただし、期限の利益を喪失したことに基づき既になされた乙の行為については、その効力を妨げないものとします。
―銀行取引約定書第5条第1項(期限の利益の当然喪失)終了―
 
 
「期限の利益」というのは、「約定である月元金x万円と利息を返済して、返済の最終期限のx年x月x日までで償還してくださいね」というもので、これを失うことなのだから、結果として「すぐに全額返済してください」ということになるのだ。
 
会社で信用保証協会付の融資を受けているA銀行に、社長の定期預金が500万円あったとして、社長個人に金を貸しているBから返済期限をすぎているという理由でその預金に仮差押がかかった場合、まずA銀行は社長の話を聞き信用保証協会に事故届けを出すことになる。そして差押が解除されずに経過した場合、上記の期限の利益喪失条項が適用され、会社の新規の融資も手形割引もできなくなる。
そして、その結果として資金繰りはいきずまり倒産することになる。
 
差押えられたものが会社の預金ではなく、社長の預金であるにもかかわらず、中小企業の場合、連帯保証のためにこの「期限の利益の当然喪失」条項が適用されてしまう。
 
この仕組みを使えば債権者は債務者の弁慶の泣き所をおさえることができ、交渉において優位に立つことができることになる。
 
くれぐれも、仮差押・差押をあまくみないように。

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