「新たな営業利益はどこから生まれるのか?」
この質問にたいする経営者の答えは、おおよそ2つに分かれる。
ひとつは、経費削減、いわゆる人件費をカットしたり、光熱費を節約したりというコストカット型のもの。
そして、もうひとつがビジネスじたいを見直し、新たな利益を生み出すビジネスモデル創造型のものといえる。
経営がいきづまり、「このままじゃ新規融資も出せなくなるので経営改善計画を出してください」と銀行から言われた債務者の多くがコストカット型主体の経営改善計画を作るが、それでは社員も次第についてこなくなる。
「給料は減らすけれど今まで以上にがんばって!」じゃ社員は納得しないはずで、さらに業績は落ち込むことになるのが関の山だ。
では、なぜビジネスモデル創造型利益増加の経営改善案が思い浮かばないかというと、まず、自社の事業のビジネスモデルをしっかりと把握していないとか、同業他社と同じやり方に満足してしまっているとか、ビジネスモデルを創出するたたき台になるはずの知識吸収がされていないとか、うちの仕事はこういうものだと思い込んでいるとかが主な原因になることが多い。
つまり、経営陣の勉強不足、新しいことにとりくむチャレンジ精神の不足なのだ。
十万名ほどの顧客をもつ一般消費者向けの商品を扱う会社が経営改善案を作ることになり、何回もの社内会議の末にできあがったものが、給与削減主体のコストカット型のものだった。案の定、一般社員はモチベーションを失い業績もかえってふるわなくなった。ところが、経営者は業績の数字だけを見て「どうしてだろう」と考えていた。
ビジネスモデル創造型利益増加の経営改善案といっても、同じ業種でありながらビジネスのやりかたじたいを変えてしまうものもあれば、仕入れ方法を変えて原価を減らし粗利益の段階で利益率をあげるもの。さらには商品販売には必要と思われた店舗じたいを売却し、他のやりかたの販売方法に変えるものなど、多岐にわたる。そこでこの会社は、ビジネスのしかたじたいを見直すことから経営改善を再び始めた。
そして、出た結論が、今まで複数の店舗で売っていた商品を、集客できる店舗を除き閉鎖。そこにおいてあった商品をAMAZONに預けたのだ。
Amazonではフルフィルメント by Amazon(FBA)といって、Amazonが出品者に代わって注文を受けて商品を出荷。出品者は商品をいったんAmazonに納品し、納品された商品をAmazon 配送センターにて保管、カスタマーからの注文に応じてAmazonが出荷してくれるサービスを展開している。しかもこのサービスでは商品にもよるが利用料も倉庫代も安いときている。
ところで、これで今まで店舗の賃貸にかかっていた費用も、その店の店員にたいする人件費もかなりカットできたが、これで終わりではないのだ。じつはビジネスモデル創造型利益増加策としては、ここからが本番になる。
AMAZONの倉庫に多くの商品を納品してみたものの、売れる商品ならいいが、売れない商品ではずっと売れない、つまり倉庫料だけがかさむという事態になった。いくらロングテールといってもこれでは採算が悪化する。あわてて、個別商品の売れ具合や傾向を分析し、品揃えを売れ足の速いもの中心に仕入れることになる。そしてその売れ方のデータが次に売れるもののデータ予測へと結びついていくのだ。
かくして、この会社は経営改善をなしとげ、前期決算よりも売上高営業利益率は増加することになるだろう。
今までのやり方でいいと思っていたのでは、いつまでたっても新たな営業利益を生み出すことは出来ないと思う。