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戦略・戦術

第十話 崖っぷち下請け町工場_家具職人のチャレンジNo.2

中小企業の「1位づくり」戦略

こんにちは!
1位づくり戦略コンサルタント
佐藤元相です。
今日のテーマは
崖っぷちの下請け町工場_家具職人のチャレンジNo.2
です。

岐阜県山県市にF-FURNITUREというブランドの
オーダーキッチンメーカーがあります。
創業は1932年、従業員数は10名で
会社名は藤岡木工所といいます。
大手建設会社の100%下請けで
マンション据え付け家具を製作していました。
2009年のリーマンショックのときは、
受注が激減して窮地に追い込まれています。
前回の内容はこちらから
https://www.jmca.jp/column/detail/12278
崖っぷち下請け町工場_家具職人のチャレンジ

脱下請!
モノづくりに自信はあるが、モノうりは経験がない。
だから営業はやりたくない。

元請けになるためには営業をしなければなりませんが、
工務店や設計事務所に頭を下げて
「仕事ありませんか」と営業するのは苦悩以外の何ものでもありません。

職人の誇りは高いが、知名度はない。
お金をかけて宣伝広告する余裕もない。

「うちにあるものは何か?」
「うちの会社を知ってもらうために何ができるのか?」
藤岡社長と考えを話してくれました。


アンテナを張る

あるとき、紹介である設計士の方が
藤岡木工所を訪れてきました。

展示していた創作キッチン観て
「このクオリティーはスゴいですね」
と設計士が口にしました。

 

写真1.jpg

その言葉を聞いて「はっ」とした。
「うちの工場を観てもらえれば、価値が伝わるのでは?」と
藤岡社長は思いました。

ただ単に工場を観てもらうだけでは、つまらない。
「うちにあるもので、どこもやっていないことを、
お金を掛けずになにかできないだろうか?」

ある!

チークやウォールナットなどの高級材で
テーブルを造ると必ずあまりが出てくる。
3mの木をつかって、1mあまることが多々あります。

そこで、この高級材の天然木を使って、
カッティングボードやトレイをつくるような、
大人に特化したワークショップを開催したら
暮らしにこだわりをもつ人たちに興味を持って
もらえるかもしれないと思いました。

写真2.png

またうちの価値は職人です。

写真3.jpg

 

熟練家具職人がお客様の作業をフォローすることで
うちの良さを知っていただき、
より良い関係づくりができるかもしれません。

いろいろ調べてみましたが、
高級天然木を使ったワークショップは
どこもやっていませんでした。

これはいける!
試しにやってみたとしても
大損するわけでもありません。

客層を絞り工場で体験してもらう。
熟練職人とふれあってこだわりのモノづくりを体感してもらう。
そこで「ウォールナットでつくるカッティングボード」と
いうワークショップの企画を立てることにしました。

岐阜エリアで住宅を購入する人は30代が最も多い。
その中から、暮らしにこだわりを持つ人たちを
理想のお客様と決めました。

「暮らしにこだわりを持つ人はどこへ行くのか?」
客層を絞ると人の行動パターンが見えてきました。
岐阜でこだわりのある雑貨屋さんやお花屋さん、カフェが
あたまに浮かびました。

じつは、嫁さんがこうしたショップが好きで
いくつか店主とご縁があったので、
イベントのDMカードを置いてもらいました。


営業はせず、人間関係づくりに集中する

イベントDMを製作する前に、
ショップの方にインタビューをしてみました。
すると・・・
「家具の写真とか載っていたら私は手にしない」
「オシャレでカワイイモノなら手にするかもしれない」

写真4.jpg

そんな声が聴くことができました。
お客様に手に取ってもらえるにはどんなデザインがいいのか?
いくつかのパターンをつくり確認してもらいました。

しばらくして、ホームページのアクセスを分析しました。
DMを手にしたお客様からアクセスが確実に増えていました。


第1回目のワークショップを開催しました。
「天然木でカッティングボードをつくる」には
定員10名(午前の部)+10名(午後の部)の募集に
93名の応募がありました。
びっくりしました。

写真5.jpg

ショップの方からは「スゴい人気ですね。私も参加したい」
などの声をいただきました。
口コミが拡がっていきました。


またワークショップに参加してくれた方が
BlogやInstagramで紹介してくれました。
またショップの方からコラボをしたいという話も出てきました。
会社の認知度がぐんぐん高まっていく手応えを感じていました。


しかし、イベントを開催したからといってすぐに
受注が増えるワケではありませんでした。


あるとき料理研究家の方が尋ねてこられました。
Blogには1日4万アクセスあるという方だというのです。
料理教室用のキッチンのオーダーをいただきました。
先生の紹介や生徒さんの口コミで受注が徐々に増えていきました。

理想のお客様に喜んでもらえるイベントは何かを考え実行すると
当社に合うお客様が少しずつ増えていきました。

写真6.jpg

3年は継続する!

ワークショップは継続的に開催することにしました。
1年に3回計画しました。

 

写真7.jpg

あるとき、有名な建築家の方から
「藤岡さんにキッチンを造って欲しい」指名されました。
「私に直接声を掛けてくれたことがとても嬉しかった」と
藤岡社長は話してくれました。

その仕事は全国版の建築専門雑誌に掲載されました。

写真8.png

 

雑誌で掲載された事例を観て、他の建築家や設計士から
キッチンの相談を受けるようになりました。
こだわりの家づくりをしている建築家や設計事務所から
問い合わせが少しずつ増えました。
パートナーとして声かけして頂けるようになっていました。


つまり、設計事務所もお客様に選ばれるためには、
差別化しなければなりません。
F.FURNITUREのオーダーキッチンは
設計事務所にとってお客づくりに役立つ存在と
なっていたのです。


価格競争にならない環境ができあがっていく。

客層・商品・地域を明確にすることで自社のポジションが
明確になる!
それを3大戦略といいます。

藤岡木工所 F・FURNITUREは、ワークショップ型の
営業に取り組み3年目で1人当たりの粗利益額は
業界平均の1.5倍を超えました。

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