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採用・法律

第11回 『「働き方改革」の年次有給休暇の確実な取得とは?』

中小企業の新たな法律リスク

太田社長が新聞記事を持ちながら賛多弁護士に相談に来ました。
 
* * *
 
太田社長:今年の4月から主に大企業で始まった「働き方改革」の記事を読んでください。ここに、使用者が年次有給休暇5日を時季指定しなければならない、と書いてありますよね。
 
賛多弁護士:そうですね。御社のような中小企業も、今年の4月からは、同じ対応が必要になりますよ。
 
太田社長:え、そうなんですか?中小企業は2020年4月からだと思い込んでいたのですが‥‥。
 
賛多弁護士:中小企業が2020年4月から適用されるのは、時間外労働の上限規制ですね。
 
太田社長:ありゃりゃ、それはまずいな‥‥。今からでも間に合いますか?
 
賛多弁護士:大丈夫ですよ。行政からも、「法第39条7項に規定する使用者による時季指定は、必ずしも基準日からの1年間の期首に限られず、当該期間の途中に行うことも可能である。」との通達が出ています。
 
太田社長:そうか、今からでも間に合うならよかったです。それで、具体的には何をすればいいのですか?
 
賛多弁護士:まず、対象者を確認しましょう。対象者は、管理監督者を含む法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者です。
 
太田社長:管理監督者も含むということは、部長や専務も対象なのですね。
 
賛多弁護士:御社の専務は従業員兼務取締役であり、労働者としての側面もお持ちですので、そうなりますね。次に、使用者は、労働者の意見を聴取した上で、年5日までは、時季を指定して年次有給休暇を取得させる必要があります。これを、「時季指定義務」と言います。
 
太田社長:従業員が、基準日からの1年間の中で、既に3日、年休の取得を請求していたら、どうなるのですか?
 
賛多弁護士:その日数分を、時季指定義務から控除しますので、社長は残る2日についてのみ時季指定をする必要があります。
 
太田社長:うーん、なんだか面倒だな‥‥。会社が一括して年次有給休暇を時季指定することはできないのですか?
 
賛多弁護士:さすが社長!労使協定で計画的に取得日を定めて年次有給休暇を与える方法(計画年休)もあります。
 
太田社長:いいですね、いいですね。夏季に2日、冬季に3日与えるようにすれば、従業員達の希望に合致したものになりそうですね。その他、気を付けることはありますか?
 
賛多弁護士:使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。また、使用者が時季指定をしたにもかかわらず労働者が実際に年次有給休暇を取得せず就労した場合は、年次有給休暇を与えたことになりませんので、労基法39条7号に違反することとなります。罰則は労基法120条1号で、30万円以下の罰金と定められています。
 
太田社長:罰則まであるのですね。では早速、実務担当者と話し合って、労使協定の準備をしますね!
 
賛多弁護士:またご不明な点がございましたら、お知らせください。
 
太田社長:ありがとうございます。よろしくお願いします。
 
* * *
 
 
 年次有給休暇は、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされていますが、職場への配慮やためらい等の理由から取得率が低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています 。このため、今般、労働基準法の改正により、使用者には、労働者に年5日以上の年次有給休暇を取得させることが義務付けられました(労働基準法第39条7項)。
 年次有給休暇の取得は労働者の心身の疲労の回復、生産性の向上など労働者・使用者双方にとってメリットがあります。労働者が確実に年次有給休暇を取得できるよう、使用者には環境整備が求められています。
 
 
<ご参考>
パンフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(厚労省・労働局・労基署)
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

 
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 木元有香
 

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