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マネジメント

組織を動かす力(6)個人が主張できる環境

指導者たる者かくあるべし

 参謀にイエスマンは要らない

 監督一年目で横浜ベイスターズを日本一に導いた権藤博だが、選手引退後のコーチ稼業ではつねに監督とぶつかった。

 たとえば投手に連投を命じる監督に、「あの選手は疲れが溜まっているから、今日は使わないでください」と具申する。「黙って言う通りやれ」と怒鳴り返される。長丁場のシーズンを乗り切るための意見だから引き下がらない。「使いにくいコーチだ」となる。

 だが、権藤の考えはこうだ。「部長が社長に楯突く。組織論から言えば組織を崩壊させかねない危険な行為かもしれない。しかし、私が社長なら、そういった人こそ参謀に起用する。参謀に“イエスマン”は不要だ」

 

 考えが同じならどちらか一人でいい

 ソニーを世界トップ企業に育て上げた盛田昭夫と井深大もよく人前構わず激論を交わした。二人が「意見が同じ人ばかり集まっても、いいモノは生まれない」という一点で信頼しあっていたからだ。

 副社長時代の盛田にこんなエピソードがある。あるとき、会長の田島道治と意見が対立しぶつかった。盛田のきつい物言いに田島は激怒したが、盛田は強硬に主張し続けた。引き下がらない盛田に、温厚な田島が切れた。

 「盛田君、君と私は意見が違う。絶えず意見が対立するような会社にいようと思わない。いますぐに辞める」

 盛田は臆することなく切り返す。「お言葉ではありますが、あなたと私がすべての問題についてそっくり同じ考えなら、二人が給料をもらっている必要はありません。どちらかが辞めるべきでしょう。しかし、この会社がリスクを最小限に抑えて、どうにか間違わないですんでいるのは、あなたと私の意見が違っているからではないでしょうか」。もちろん田島が会社を退くことはなかった。

 

 現場こそ主張しろ

 現場は躊躇なく主張しろ、というソニーの社風につながっている。「現場のことは現場の人間が一番心得ている」という信念である。

 権藤も監督就任後、“物申すコーチ”たちの意見に耳を傾けた。「彼らはより現場に近いところにいて、トップの目に入らないものがいろいろ見えるからだ」。奇しくも盛田の思考と同じなのだ。

 

(書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

※参考文献
『教えない教え』権藤博著 集英社新書
『世界が舞台の永遠青年/盛田昭夫語録』ソニー・マガジンズビジネスブック編集部編 ソニー・マガジンズ
『ソニー盛田昭夫』森健二著 ダイヤモンド社
『MADE IN JAPAN わが体験的国際戦略』盛田昭夫著 朝日新聞社

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