■岩崎邦彦(いわさきくにひこ)氏
静岡県立大学教授/「小が大を超えるマーケティングの法則」著者
上智大学卒業後、国民金融公庫を経て東京都庁に転じ、労働経済局にて中小企業の経営支援、地域振興に携わる。静岡県立大学教授となった今も一貫して中小企業が活用できるマーケティングの実践手法を研究し、経営支援で東奔西走の日々を送る。主な著書に「引き算する勇気:会社を強くする逆転発想」、「小さな企業を強くするブランドづくりの教科書」(日本経済新聞出版社)他多数。
消費者調査をしてみると、興味深い結果に出会うことがあります。
たとえば、観光の消費者調査をすると、「長野県」には行きたくはないが、長野県の「軽井沢」には行きたい人がいます。
長野県に行ってみたいと回答した人は47.9%ですが、軽井沢に行ってみたいと回答した人は、61.6%と6割超です。
「栃木県」に行きたくないが、「日光」には行きたい人も多くいます。栃木県に行ってみたいと回答した人は26.2%ですが、日光に行ってみたいと回答した人は、ほぼ倍の53.1%に上ります。日光は栃木県にあるのに。
「岐阜県」には行きたいと思わないが、「飛騨高山」には行きたい人がいます。岐阜県に行ってみたいと回答した人は37.0%ですが、飛騨高山に行ってみたいと回答した人は、60.0%に上っています。飛騨高山は岐阜県にあるはずです。
軽井沢、日光、飛騨高山の住所は、それぞれ長野県北佐久郡軽井沢町。栃木県日光市。岐阜県高山市。上記の消費者調査の回答には、明らかに論理的な矛盾があります。
しかし、この結果は、ブランド的には十分ありえます。なぜなら、ブランドは論理を超えるからです。
論理的にみると、軽井沢、日光、岐阜高山は、長野県、栃木県、岐阜県の一部ですが、ブランド的にみると、軽井沢、日光、飛騨高山は、長野県、栃木県、岐阜県を超えているのです。
おそらく、長野県、栃木県、岐阜県は、単なる「地名」です。一方で、軽井沢、日光、岐阜高山は、地名を超えた「ブランド」だということでしょう。
さて、あなたの会社名は、単なる「名前」でしょうか。それとも「ブランド」でしょうか。
参考文献:岩崎邦彦「地域引力を生み出す 観光ブランドの教科書」/日本経済新聞出版社