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税務・会計

第16回 社長が知っておくべき「粉飾決算を見分ける3つのコツ」

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 
 
景気が悪くなると、増えてくるのが粉飾決算です。
業績が悪化している実態を隠して、決算上の数字を化粧して良く見せようとする会社が多くなるからです。
「赤字では銀行から融資を受けられない」というのが、中小企業の不正な経理処理で最も多い理由です。
粉飾決算が怖いのは、一度手を染めるとやめられなくなるところです。
当然ですが、粉飾決算をする会社はすぐに行き詰まります。
したがって、粉飾決算をしている会社と取引を継続することは非常に危険です。
社長としては、定期的に取引企業の財務状態にも目配せをしておくことも重要です。
そこで今回は、取引先の経営状態を確認するための「粉飾決算を見分ける3つのコツ」を伝授します。
 
御社では、取引先の財務状態に目配せしていますか?
 
 
●信用調査会社から財務情報を入手する
取引先企業の決算書を取り寄せている会社は、中小企業ではほとんどありません。
新規取引の前や多額の契約を締結する場合に、相手の与信調査のために信用調査会社を利用するのが一般的です。
 
信用調査会社としては帝国データバンクや東京商工リサーチなどが有名です。
サービス内容や費用については、検索してみてください。
金融機関や地元の商工会議所などでも相談に乗ってくれます。
 
会社案内やセールストークだけでは、会社の内情まではわかりません。
ましてや、財務状態や資金繰りの状況までは絶対に見えません。
第三者機関から客観的な情報を入手して判断材料を増やすことで、取引リスクの軽減ができます。
 
特にコロナ禍では、企業を訪問したり、相手の社長とじっくり話をしたりすることが難しい状況です。
情報の不足分を補うルートを増やしておきましょう。
 
御社では、取引リスク軽減のための情報を収集していますか?
 
 
●【粉飾決算を見分けるコツ①】架空売上高の計上を見抜く
信用調査会社から調査結果の報告を受けたら、添付されている財務資料を詳しく調べます。
決算書の数字から、粉飾決算の疑いがないかを見極めるのです。
 
まず注目するのが、売上の信憑性です。
粉飾決算で最も使われる手口が、「架空売上高の計上」だからです。
実際の商売で売上を獲得して利益を増やすのは大変ですが、粉飾決算は会計伝票1枚で簡単にできます。
 
最初は1回だけのつもりで数字に下駄を履かせるのですが、次の年は前年の修復分だけではなく、増収増益をアピールするために、さらに金額が膨れあがります。
会計上の損益科目である「売上高」は、来期になればゼロからスタートするので、過去に粉飾した事実は残りません。
 
しかし複式簿記では、収益が増加すると同額の財産が増加して、貸借対照表に残ります。
売上高の相手勘定は「売掛金」です。
粉飾した架空の売上高は売掛金として積み上がっていくのです。
 
その結果、回収されない売掛金残高だけが異常に膨れあがっていきます。
ですからまず、売上高に対して売掛金が過大になっていないかを検証してください。
貸借対照表の売掛金の残高が、通常の回収周期である売上高の2~3カ月分を超過しているようであれば、問題視したほうがいいでしょう。
 
粉飾した決算書で融資を受けると、詐欺罪になることを知っていますか?
 
 
●【粉飾決算を見分けるコツ②】仕入や経費が少なくないかを調べる
2つ目の粉飾の手口は、仕入や経費を抜いてしまうやり方です。
本来であれば、商品を仕入れたりサービスの提供を受けたりして、請求金額が確定した時点で仕入高や費用を計上します。
 
当たり前ですが、仕入高や費用を計上すれば利益が減ります。
利益の減少を避けるために、支払の請求書を受け取っても代金を支払わずに、経理処理をしないケースもよく見られます。
 
仕入や経費を抜くケースでは、相手勘定である「買掛金」と「未払金」を調べます。
買掛金や未払金が計上されていなかったり、残高が異様に過少であったりする場合は、仕入高や外注費などの計上漏れが疑われます。
 
御社の売掛金は、得意先の買掛金と残高が一致していますか?
 
 
●【粉飾決算を見分けるコツ③】在庫の数字を盛っていないかを調べる
粉飾決算をする場合、売上高や仕入高、経費科目は、社外の相手との取引を誤魔化すことが前提になります。
それに対して、社内の数字をいじるだけでできるのが在庫金額の不正です。
 
事業年度内に商品を仕入れたうち、販売して在庫がなくなった分だけが「売上原価」として会計上費用処理されます。
売れ残った在庫は費用にならずに貸借対照表の資産として残り、翌期以降に繰り越されます。
 
つまり、期末の商品の棚卸しで在庫金額が大きくなるほど、費用が少なくなり利益が増えるのです。
これを利用して、実地棚卸しの数字を水増しすれば利益を調整できるわけです。
 
この在庫の不正を確かめるために、在庫の回転スピードを調べます。
貸借対照表上の「棚卸資産(商品、材料、製品等)」勘定の金額を、損益計算書の売上高や仕入高で割って、さらに12倍して何カ月分に相当するかを計算します。
卸売業、小売業であれば、適正な在庫量は約1カ月分です。
製造業の場合でも、在庫量は2カ月分以内が平均です。
業種によって多少の差はありますが、著しく大きい場合は、在庫を盛っていることが考えられます。
 
取引先の倉庫を、見に行ったことがありますか?
 
 
●相手の会社の経営者の立場になって考えてみる
以上の3つが、簡単にできる粉飾決算の見分け方です。
もう一度、整理しておきます。
 
【粉飾決算を見分ける3つのコツ】
①架空売上高を売掛金の大きさで疑う
②仕入や経費の過少計上を買掛金と未払金から推察する
③在庫の水増しを在庫回転で検証する
 
もちろん粉飾の手口はほかにもたくさんあります。
巧妙に仕組まれたら、専門家でも決算書だけでは見破れません。
自分の経験と勘だけで判断するのではなく、できる範囲で情報を収集します。
最低限の与信調査は会社を守るために必要です。
 
時間がないときは、経理に依頼して、上記の3つの数字の中身を細かく見てもらうようにします。
最後に社長自らが、相手の会社の経営者の立場になって、数字を総合的に判断します。
そうすると、「この数字では経営はかなり苦しいはずだ」「この状態では資金繰りがもたない」という疑問点が浮かび上がってきます。
数字に少しでも疑問があれば、調査会社に再度確認してもらうことをおすすめします。
 
御社では、取引先の経営状態を経験と勘だけで判断していませんか?
 

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