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税務・会計

第44回 申請期限迫る!【事業復活支援金】|コロナ禍売上減の事業者対象

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 この約2年間、コロナ禍で世界経済は大きく混乱しました。
 人の行動が制限され、モノの流通が停滞したことにより、企業はビジネスの転換を迫られました。 
 特に、飲食、交通、宿泊、イベント、娯楽、アパレル、広告などに関連する業種は、大きく業績を落とした企業が多数出ています。コロナ対策の緊急融資で資金を食いつないで、なんとか倒産を免れた会社も少なくありません。
 コロナが収束へ向かうなか、これから企業はコロナ禍で失った2年分を挽回しなければなりません。
 会社の存続が精一杯の中小企業にとって、先立つものがなければ回復できません。事業を立て直したり、新しいビジネスを始めたりするには資金が必要です。
 そのため、政府がコロナ禍売上減の中小企業対策で準備したのが、「事業復活支援金」制度です。
 そこで今回は、2022(令和4)年5月31日の申請期限が迫る「事業復活支援金」制度について3つのステップで説明します。

御社では、コロナ後の業績挽回の準備はできていますか?

 


①「事業復活支援金」の受給条件を確認する

「事業復活支援金」を受給できるのは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、売上が減少した中小企業です。新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、需要が減少したり、供給が制約されたりした事業者が対象となります。
 具体的には、次のようなケースが該当します。

・休業や時短営業の要請を受けた
・イベント等の延期や中止を要請された
・外出や移動の自粛により顧客が減った
・交通や物流が制限され業務が縮小した

 自社が直接影響を受けていなくても、顧客や取引先が影響を受けたことにより、間接的に影響を受けた事業者も対象です。そのなかで、コロナ前と比較して、売上が30%以上減少している中小企業が受給対象となり得ます。
 判定方法は、2021年11月から2022年3月のいずれかの月の売上高を、2018年、2019年、2020年、2021年のいずれかの年の同じ月の売上高と比較します。
たとえば、2019年1月の売上高が100万円で、2022年1月の売上高が50万円であれば、50%減少していますので受給対象となります。

 過年度の売上との比較になりますので、経理に指示して、2018年以降の月次売上高の一覧表を出力してもらいます。
 各年度の11月~3月の5カ月の売上高を抜き出して、対象月(2021年11月~2022年3月)の売上高と比較してみてください。
 次の点に注意して、間違えないように慎重に比べてみましょう。

・対象となる期間は、2021年11月~2022年3月の5カ月間
・判定は、単月の売上高を前年以前の同月の売上高を比較する(合計や平均ではなく)
・2018年~2021年のどこかの年の1カ月が30%減少していれば対象となり得る

コロナ前と比べて、御社の売上は何%減少していましたか?

 


②「事業復活支援金」給付額をシミュレーションする

 今回の「事業復活支援金」は、対象者の判定方法もわかりにくいのですが、給付額の計算方法も複雑です。
 まず、法人の給付金の上限額は、会社の年間売上高によって3段階に分類されています。さらに、売上の減少率が「50%以上」か「30%以上50%未満」かによって、給付金額が異なります。

 次に、実際の給付額の計算がまた、やっかいです。

<給付額の計算式>
給付額=基準期間の売上高*―対象月の売上高×5
*基準期間の売上高:比較対象月を含む11月~3月の5ヵ月間の売上合計

 先ほどの例で、2019年1月の売上高が100万円で、2022年1月の売上高が50万円(50%以上減少)のケースで計算してみます。
 この会社の年間売上高は1億円以下で、この基準期間「2018年11月~2019年3月」の5カ月間の売上合計が500万円の場合は、上限額まで受給できます。

給付額=基準期間の売上高*ー対象月の売上高×5
500万円―50万円 ×5 = 250万円
*上限100万円

 比較した「月」や「年」によって金額が変わってきます。
 申請ミスが起きないように、「事業復活支援金」の申請サイトには給付金額をシミュレーションするサイトが用意されています。

●「事業復活支援金」シミュレーション
https://jigyou-fukkatsu.go.jp/simulator/index.html

 申請前に必ず自社の売上高を入力して、給付額を試算してみてください。

「事業復活支援金」給付金の計算は適正ですか?

 


③申請手続きは、顧問の会計事務所をとおすと効率的に行える

 助成金や給付金の申請手続きは、わかりにくく面倒な場合がほとんどです。
 「事業復活支援金」は、Webサイトからの申請が可能ですので、利用してみてください。
 手続きもれが心配の場合は、全国に申請サポート会場が設置されています。補助員が電子申請の入力サポートをしてくれます。

●「事業復活支援金」申請サポート会場について
https://jigyou-fukkatsu.go.jp/support/index.html

 申請Webサイトから手続きしようとしたところ、「必要書類の多さにやる気を喪失した」という経営者が何人もいました。
 顧問の会計事務所が、「事業復活支援金」の申請手続きの「登録確認機関」になっていることが多いので、まずは連絡してみましょう。
 その場合、顧問の会計事務所が確認すれば、申請に必要な帳簿などの確認書類が省略できるので、手続きがスムーズに速やかに進みます。
 細かい手続きの仕方や計算方法などについて悩んで時間を費やすよりも、はじめから専門家に聞いてしまったほうが効率的です。

 「事業復活支援金」の申請手続きの締め切りは、2022(令和4)年5月31日です。
 早めに準備して、手続きしてください。

「事業復活支援金」について、顧問の会計事務所に相談しましたか?

 


助成金等を活用して事業を立て直す

 今回は、「事業復活支援金」の制度について説明しました。
 次の点を再度確認して、給付金の受給漏れがないようにしましょう。

①「事業復活支援金」の概要を理解して、受給対象かどうかを判定する
②給付額を申請サイトでシミュレーションする
③申請手続きは顧問の会計事務所に相談する

 「事業復活支援金」の受給の有無にかかわらず、コロナ前の2018年から各年の月別の売上高を比較して見るいい機会です。
 社長としては、月次決算が締まったら、売上を過年度の同月と比較して次の手を考えます。
 次の手を打つ資金が足りないときは、助成金などを利用して事業の復活を目指しましょう。

御社では、コロナ後に必要な資金の準備はできていますか?

 


【参考】
「事業復活支援金」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_fukkatsu/

「事業復活支援金シミュレーション」(経済産業省/中小企業庁)
https://jigyou-fukkatsu.go.jp/simulator/index.html

 

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