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社員教育・営業

第37講 事例を使ってクレーム対応の間違いと、最善の対応を学ぶ(6)
~業務用の大型複合機が、購入して1年2カ月後に故障をした。保証期間が切れているとはいえ、2カ月しか経っていない。無料修理をしてほしい~

クレーム対応 実践マニュアル

お客様:中小企業の総務部の課長。40歳くらいの男性
お申し出方法:お電話
お申し出日時:水曜日の10時
受け付けた窓口:複合機メーカーのカスタマーサポートセンター
商品:28万円相当の業務用複合機


主なお申し出内容:
1年2カ月前に事務機器カタログで見つけた業務用複合機を注文し、会社に設置した。1週間前から紙詰まりが再々発生していたが、そのたびに、エラー表示が誘導する方法で解消をしてきた。ところが、月曜日の夜、来週の月曜日に開催されるイベントの際に配布する大量の印刷物のプリントをしている中、紙詰まりになり、『カスタマーセンターにお問い合わせください』とエラー表示部分に文字が出たきり、動かなくなった。火曜日の朝10時にカスタマーセンターに電話をしたところ、修理をしなければならない症状だという。しかも修理代がかかるので、概算金額で見積書を出すということだった。この日の14時くらいに56000円の概算金額の見積書がFAXで届いた。早速、稟議書を作り、社長に見せたら、「まだ、1年2カ月しか経っていない。その修理費は無料にしてもらいなさい。払う必要はない」という指示が出た。保証期間から2カ月しか過ぎていないのだから、無料で修理してほしい。そもそも、28万円もかかった機械で、購入の時も、総務部の自分がいろいろコスト計算をし、性能を吟味して決定したのに、こんなに早く故障し、56000円も払わなければならないということは、想定外だ。無料で修理をしてほしい。

お客様の希望:
購入から1年2カ月しか経っていないのだから、56000円の修理代を無料にしてほしい。


求めたいアドバイス:
保証期間は1年なので、たとえ2カ月だけの経過とはいえ、修理代は無料にすることはできない。説得する方法はないだろうか。


アドバイス:

(1)お申し出者のお話しをしっかりと聞きとると、複合機が動かなくなったこと以外に、この担当者のお困りの点が浮き彫りになっています。
   A 月曜日の夜、来週の月曜日に開催されるイベントの際に配布する大量の印刷物のプリントをしている中、紙詰まりになり、『カスタマーセンターにお問い合わせください』とエラー表示部分に文字が出たきり、動かなくなった。
   B 早速、稟議書を作り、社長に見せたら、「まだ、1年2カ月しか経っていない。その修理費は無料にしてもらいなさい。払う必要はない」という指示が出た。
   C そもそも、28万円もかかったもので、購入の時も、総務部の自分がいろいろコスト計算をし、性能を吟味して、決定したのに、こんなに早く故障し、56000円も払わなければならないということは、想定外だ。

(2)整理をしますと
   A ⇒来週の月曜日にプリントしたものを使えるようにしたい。
   B ⇒自分は早急に修理をする気があるが、社長が無料にこだわっている。
   C ⇒自分がこの機種を選んだ責任がある。
   この3つが、お申し出者のお困り事だということがわかります。
   この3つに対して、解決に努めることを考えましょう。
   それではそれぞれ、どのように努めることが好ましいのかをアドバイスいたしましょう。

(3)A ⇒このようにああだこうだと討議をしている間にも時間が経ち、復旧し、再び快適にご利用いただける時間が遠ざかり、来週の月曜の印刷物の作成に間に合わなくなることをお伝えする。
と言っても、上記のように口頭でお伝えするのではありません。今、修理の合意をいただければどのようなタイムスケジュールで復旧がかなうかを示すことが好ましいでしょう。

(4)B ⇒お申し出者は、修理費の問題よりも早急に修理にとりかかり、再び快適に機械が稼働することを望んでいることが、稟議書提出の早さから察することができます。ただ、社長が修理費にこだわっているようですので、社長を説得することが必要となります。
と言っても、社長と担当者がお話しをするのではなく、社長を説得する際に使える資料をお申し出者に差し出すことが最善の考えだと思います。つまり、(3)でアドバイスをしたような、今後の修理期間に関するタイムスケジュールを用意することや、保証期間の定義についてご理解いただくために記載された書面(契約書のその部分・法的な概念を記載したものなど)を用意することや、見積もり金額の根拠を簡単に示した書面を用意することなどをお勧めします。

(5)つまりお申し出者が、社長を説得できるツールを提示することが必要です。口頭だけで、説得しようとしないで、口頭の内容と同じ内容でかまわないので、書面を差し出すことが好ましいでしょう。
担当者のこの工夫に、お申し出者は一旦引き下がる思いが芽生えます。

(6)C ⇒そもそもこのお申し出者が、この製品を気に入ってくださり、購入の決断に至らしめてくれたようですので、その選択がまちがいではなかったことを社長をはじめ、他の者に伝えることができるツールを提供してあげてください。つまり、この製品の特長や、メリットが記載されたパンフレット、カタログのその部分にアンダーラインを引き、「今後も快適に便利に使ってもいただきたいために」と言って、その書面をお送りする。また、同じような誤使用をしないための注意ポイントを提示し、複合機の天面にでも貼り付けることができるようなステッカーを差し上げるのも魅力的な方法です。

(7)つまり、この製品を推奨してくださったお申し出者の会社での自尊心が高まるように、これ以上自尊心が損なう事がないように、援助をするという考え方が必要です。

(8)お申し出者のお話しの中には、解決のヒントがたくさん含まれています。そのヒントを無視しないで、なんとかできないかと工夫をすることが、お申し出者の気持ちをとらえ、引き下がる思いを高めることになります。

(9)自分の会社のルールだけを、延々とお伝えすることだけで解決できると思うその怠慢な思考がクレームをこじれさせます。こじれそうなクレームには、それ相当の知恵と工夫と汗を出さなければ解決はできないという考えを持って対応をすると、予想以上にこじれることを防ぐことができます。

 

中村友妃子          


※用いた事例は、実際事例ではなく、よくある事例を基本にして、講師が、独自に作成した事例であることを
ご了承ください。

第36講 事例を使ってクレーム対応の間違いと、最善の対応を学ぶ(5) ~10日ほど前、遠方の知人宅に行くのに、あなたのお店の果物を買って持って行った。その知人からその果物にカビが生えていて食べれなかったと連絡があったのできのう、お詫びに行って来た~前のページ

第38講 事例を使ってクレーム対応の間違いと、最善の対応を学ぶ(7) ~新品の黒いストッキングを着用しようとして、パッケージから出し、履こうとしたらいわゆる伝線が入っていた~次のページ

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