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第36講 事例を使ってクレーム対応の間違いと、最善の対応を学ぶ(5)
~10日ほど前、遠方の知人宅に行くのに、あなたのお店の果物を買って持って行った。その知人からその果物にカビが生えていて食べれなかったと連絡があったのできのう、お詫びに行って来た~

クレーム対応 実践マニュアル

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お客様:35歳くらいの男性(話し方が少し粗暴)
お申し出方法:お電話
お申し出日時:金曜日の夕方18時頃
受け付けた窓口:量販店の店長
商品:メロン・白桃など8,000円分


主なお申し出内容:
10日ほど前、遠方の知人宅に行くのに、お宅のスーパーで果物を買って持って行った。その知人からその果物にカビが生えていて食べれなかったと連絡があったのできのう、お詫びに行って来た。その時買った商品は、メロンや白桃など約8,000円分。10日ほど前のことなのでその時のレシートや領収書はない。その時は、お申し出者の奥様がお買い物されたので、確かな日時や、レジ対応したレジコーナーは、ご主人であるこのお客様にはわからない。先様から「果物がカビでいた」と聞かされたのは、一昨日。自分は山口県在住、先様は浜松在住なのでその日には向かうことはできなかったので、翌日の昨日に、山口県から、浜松まで謝罪に行って来た。その際に、また5,000円ほどの菓子折りを持参した。その領収書はある。交通費は往復で40,000円程度。自分たち夫婦で浜松に謝りに行ったので、合計80,000円ほどかかった。片道だけの二人分の領収書はある。

お客様の希望:
購入したメロンや白桃の8,000円(領収書なし・現品なし)と、先様に謝罪に行った際の交通費80,000円(領収書は、2名分の片道分がある)と、菓子折り5,000円(領収書あり)の合計、93,000円を返してほしい。


求めたいアドバイス:
希望にはどこまで応えなければならないでしょうか?93,000円を払わなければならないでしょうか?こちらとしては、購入したとおっしゃっている果物代8,000円の支払いだけでご理解いただけないかと考えています。


アドバイス:

(1)金銭的な対応をするためには、以下の5つ物が揃っていなければいけません。
   1)問題の現品
   2)現品の包材など、自店が販売した製品が手もとにあったことを証明するもの
   3)購入履歴を立証するもの(領収書、レシート、日付、氏名の記載された保証書や契約書など)
   4)菓子折りの領収書・レシート
   5)交通費の領収書・レシート

(2)この場合、存在するものは、4)と5)の片道の領収書ですが、それに惑わされないでください。

(3)1)~5)の中で必ず存在しなければならないのは、1)問題の現品ですが、もう処分をしてしまったや食してしまってかけらもないという事もあるかと思います。その場合は、100歩譲って、2)包材を確認してください。その包材から、自店で販売している、扱っている製品がどうかの特定をします。

(4)今回は3)のお買い物をされた果物の領収書がありませんから、2)の包材からその際の購入金額を推察しましょう。相手が申し出ている8,000円にとらわれず、今、それぞれの物体から見えてくる金額をその際の購入金額と考えてください。

(5)4)の菓子折りのレシート、5)の交通費片道2名分のレシートについては、1)の現品が存在しないのなら対応する必要はありませんので、考慮するまでもありません。

(6)クレーム対応は現品が存在することが基本です。現品がないのであれば、対応に値しません。そのことをていねいに伝えることです。
「現品をいただき、原因を突き詰め、その結果によりしかるべき対応をさせていただきたいと考えております。現品をいただくことができるようでしたら、またご連絡をいただきたいと思います」
と、もう一度現品の収集をお願いしてください。

(7)「もう現品はないんだ!」と言われたら、「包装用品だけでもございませんか。それらがいただけるようでしたらご連絡を頂きたいと思います」と、そもそも自店が販売した商品であることを突き詰めましょう。つまり、自店のお客様であることの事実を突き詰めます。

(8)「包装用品もないんだ!」ということであれば、「それでは、大変心苦しいのですがご希望の対応は致しかねます。また現品か、包装用品が見つかりましたらご連絡をくださいませ」と言い、ご希望をお断りします。

(9)ただ、ここで冷静に考えていただきたいことがあります。現品や、包装がないことと、自店商品に100%問題はなかったという決定とは別問題です。つまり自店商品に1%は問題はあったかもしれないという可能性は残っています。ただその根拠も、現品がない以上つかむことはできません。

(10)そこで、自店商品に1%は問題はあったかもしれないという可能性に対して、もうひとつやってほしいことがあります。それは「今回は、金銭的な対応はかないませんが、先様へお詫びの言葉だけは伝えさせてください。召し上がろうとした瞬間に、カビのようなものが目にとまった時の残念な思いはお察しできますので、ぜひ、直接お話しをしたいと思います」と先様へのお詫びをご提案してください。

(11)このお客様が悪質クレーマーなら、「そんなことしなくていい!そんな思いがあるなら金銭で返してくれ!領収書がある分だけでも金銭で返してくれ!」と言うでしょう。
でも、現品がないのであれば、金銭対応は一銭もできません。お詫びを言うのと、金銭で解決するのとは、リンクしないことをしっかりと覚えておいて対応をしてください。

(12)もしこのお客様が、悪質クレーマーではなく先様への体裁が繕えず困っており、その苛立ちを企業にぶつけてきており、無理難題を言っているようであれば、(10)の対応を喜んで受け入れてくださいます。

(13)(10)のトークを言う事で、このお客様が、悪質クレーマーか、そうではないかを図ることができます。

(14)もしこのお客様が、(12)のような悪質クレーマーではないお客様だという判断ができるようであれば、ご連絡をいただいたお礼として、1,000円程度の菓子折りを差し上げると良いでしょう。ただ、気をつけてほしいのは、あくまでも『ご連絡をいただいたお礼』であって、カビのお詫びでもありませんし、お客様が損をしたと思いこんでいる金銭の補てんではありません。なので、この1,000円程度の菓子折りを差し上げる意味をしっかりと言葉で言ってください。「つまらないものですが」や「今回のお詫びとして」などとこの、菓子折りの意味とは違う言葉を言わないでください。「ご希望どおりの対応には至りませんでしたが、このたびご連絡をいただいたお礼として」としっかりと言葉を言ってください。

(15)悪質クレーマーはなんでも現金化を求めますので、安易に現金化しないことも重要です。できるだけ商品で返すことをお勧めします。通常のお客様は金品での解決より、企業の汗をかいた対応を求めますので、(10)のような対応が、必要となります。

(16)(10)のような対応も拒否され、ひたすら金銭解決をもとめるようであれば、「大変心苦しいのですが、現品がない以上ご希望の対応は致しかねます。また現品か、包装用品が見つかりましたらご連絡をくださいませ」とお願いし、ご希望には添えないことであきらめていただきましょう。

 

中村友妃子          


※用いた事例は、実際事例ではなく、よくある事例を基本にして、講師が、独自に作成した事例であることを
ご了承ください。

第35講 事例を使ってクレーム対応の間違いと、最善の対応を学ぶ(4) ~1年半くらい使っている携帯電話。その携帯電話の電源がある日急に入らなくなった。ショップで調べてもらったところ、水ぬれ反応が出ている。水ぬれさせた覚えはまったくない。だから、自然故障だ~前のページ

第37講 事例を使ってクレーム対応の間違いと、最善の対応を学ぶ(6) ~業務用の大型複合機が、購入して1年2カ月後に故障をした。保証期間が切れているとはいえ、2カ月しか経っていない。無料修理をしてほしい~次のページ

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