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第38講 カスタマーハラスメント対策の実務策㉕「おまえなんか、クビにしてやる!」

クレーム対応の新知識と新常識

それはカスタマーハラスメントではありません!
④「おまえなんか、クビにしてやる!」

 担当者の対応が想定通りの対応ではなかったり、もどかしい対応だったり、失礼だと感じる対応だったり、お客様に二度手間や三度手間をかける対応だった場合、お客様は「おまえなんか、クビになればいい!」「お前を社長に言って、クビにしてやる!」と言ったりします。この怒りの場合、これまでと大きく違う争点があります。

 「社長を出せ!」「SNSに書く!」「訴える!」「もう、解約する!」などの、お客様から投げかけられる難渋トークは、『企業の回答』や『企業の対応』に対して、発せられるものでした。しかし、「おまえなんか、クビにしてやる!」は、企業の対応に怒りを持っているのではなく、担当者個人の態度に怒りを感じている言葉なのです。

 つまり、担当者の「あなたが嫌いだ!」と言っているのです。もっと言えば、「会社は嫌いじゃないけど、あなたは嫌いだ!」と言っているのです。別の側面から言えば、お客様の難渋トークの中でも、担当者個人に怒りを感じている言葉なのです。

 それでは、なぜ、この担当者は「あなたの会社は嫌いなわけじゃないけど、あなたは嫌いだ!」と言う感情にさせ、「おまえなんかクビにしてやる!」と言われたのでしょうか。それは、担当者のあなたの態度が良くないからです。どんな風によくなかったかと言うと、あなたが、相手の詰問に正論で回答を重ねたからと言えるでしょう。

 具体的に言うと、一方的に『企業のほうが悪い。だから自分は迷惑をこうむった。だから、それなりの損害補填をするべきだ」という話を、高圧的に言ってくる相手に、自分の会社の正しさ、製品の正しさ、表示の正しさ、契約ルールの正しさなどを、詳しく説明して、相手を攻略しようとする担当者の態度が「おまえをクビにしてやる!」と相手に言わせてしまうのです。つまり『相手を正論で、論破して攻略しよう』としてはいけないのです。

 企業が決めた『情報の説明』は、怒っている相手にとって『企業の言い訳』にしか聞こえないのです。なぜなら『情報』はすべて、企業が決めたことであり『情報の説明』は『企業が決めたことの説明』でしかないからです。

 お客様のわからないことを『説明する』、お客様が聞いてきたことを『説明する』、お客様が知らないことを『説明する』、これらのすべての『説明する』は、場面によっては『企業が言い訳をする』ことと変わりがないのです。想像してみてください。腹が立つ相手が、いろんな切り口で『言い訳』を重ねたら、苛立ちが高まりますよね?また、客のこちらとしても「言い過ぎたかな」と思っていたとしても、『説明』という名の『正論』の押し付けを、素直に受け入れるのには抵抗したくなる気持ちが発生しますよね?

 カスタマーハラスメントをしたくなかった客が、カスタマーハラスメント客のようになってしまう原因は、担当者の言葉などの態度にあるのだということも認識してくおいてださい。

 結論からいいますと、正しいことをわかってくれない相手にわかってもらおうと、担当者のあなたは、説明を重ねてはいけません。説明ができる回数は、最高でも2回までです。

 それでは、わかってくれない相手をどうしたらいいのか?と言うと、「これ以上、説明できるものがございませんので・・」「あとはお客様のお気持ちにお任せいたしますが・・」「お客様に喜んでいただけるお話がございませんので、私もどうしたものかととまどっております・・・」などと言って、「もう!いいです!」と、怒りながらでも良いので、あちらから電話を切ってもらうようにしてください。

 もちろんお客様が、あなたを『クビ』にすることは不可能なので、『クビ』については心配しないでください。

 ただ、こんなお互いにイヤな言葉を、お客様に言わさないように、対応の技術を使って対応をしてください。

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