2021年も、間もなく終わろうとしています。
どんな1年になりましたか?
激動の今年の締めくくりにふさわしい、
学び多き、熱き一冊をご紹介したいと思います。
『宗棍』(著:今野敏)
です。
宗棍/amazonへ
舞台は、幕末から明治維新期の琉球王国。
いわゆる「琉球処分」が行われた動乱期に、国王の武術指南役を務めた、
伝説の空手家、松村宗棍の生涯を描いた小説です。
強さを求め、激動の時代を生きた、一人の修行者の物語として読むだけでも
十分面白いですが、経営者やリーダーにとっては、読みどころがいくつもあります。
たとえば、琉球の視点からの幕末史。
薩摩との関係を始め、当時の王国内の様子が、ありありと感じられます。
幕末史観に深みが増すはず!
さらには、沖縄空手の祖と呼ばれる松村宗棍が、いかにその道を作り上げたのか?
どのように空手に出会い、発展させていったのか、そのプロセスは必見。
後世に受け継がれ、今に続く道が、ここに見えてきます。
ビジネス繁栄のヒントも!
個人的には、宗棍の師匠である照屋筑登之親雲上(佐久川 寛賀)との稽古の日々、
師弟のやりとりに、心を奪われました。
これぞ、人材育成の鑑!
文中に、こんな問答があります。
「どうしてやられるのだと思う?」
宗棍は考えた。ただ闇雲にかかっていったわけではない。
それなりに、工夫をし、変化をつけながら攻撃した。
なのに、ことごとく地面に転がされてしまったのだ。
「やはり、先生が強いからだと思います」
「もうちょっとましなこたえが返ってくると思ったのだがな…」
「どうかかっていっても、地面に転がされるのです。理由などわかりません」
「教えてほしいか?」
…この答えは、本書を読んでみてのお楽しみ、とさせていただきますが、
どの分野であれ、師弟たる上司と部下の間には、似たような状況があるはず。
身に覚えのある方も多いのでは?
そして、ひたすら強さを求め続けた宗棍は、ついに
「他人に勝つことなど、どうでもいい。自分の中に、絶対の強さを培え―」という境地に至ります。
このコロナ禍によって、息苦しい競争社会の現状が、
一層浮彫になった感もあります。
他と勝負するでも比較するでもなく、
自分の中に本当の強さを求めることが、今こそ大事と痛感します。
会社や組織においても同様。
今こそ、本当の強さを培う時ではないでしょうか。
本書を通じて、宗棍の生きざま、苦境を乗り越えて成長していく姿に触れながら、
明日への活力を!
歴史をつくった人物の人生に学べる、またとない好機です。
この年末年始に、ぜひとも読んでみてください。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『I’M STILL HERE』(演奏:キヨシ・キタガワ・トリオ)
ニューヨークを拠点に活躍するベーシスト、北川潔氏が率いるジャズトリオの
オリジナルアルバム。
ピアノのダニー・グリセット、ドラムのブライアン・ブレイドとの
まさに職人芸といえる名演の数々。
北川氏は、まるでベースを手にしたサムライのように感じられ、
本書の主たる松村宗棍と通じるものを感じます。
本書と合せてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。