突然ですが、武田鉄矢氏をご存知でしょうか?
知っているならば、どんな印象を持っていますか?
かつての国民的人気ドラマ「3年B組金八先生」の熱血教師のイメージ。
音楽ファンには、フォークグループ「海援隊」のイメージ。
ゴルフ愛好家やバラエティタレントのような印象の人もいるかもしれません。
いずれにせよ、知らない人がいないと言っても過言でないくらい、知名度が高いはず。
しかし、個性的なキャラのため、良くも悪くもイメージで見られることが多いと思われます。
かくいう僕も、武田氏のことは完全にイメージで見ていました。
書店で武田氏の読書に関する本を目にしても、手に取ることはありませんでした。
なぜなら、表紙に武田氏の顔写真が載っているだけで、なんとなく説教くさい、
理屈っぽいような印象を抱いたからです。
つまり、良くない意味での金八先生の影響に他なりません。
しかし今、僕は自分のとってきた態度を少々恥じています。
惜しいことをした、と悔いています。
この変化のきっかけとなったのが、今回紹介する一冊、
『向かい風に進む力を借りなさい』(著:武田鉄矢)
『向かい風に進む力を借りなさい』(著:武田鉄矢)/amazonへ
です。
まず興味を惹いたのが、武田氏が65歳から合気道を始めて、74歳になった今も修業中である、ということ。
年齢的なことはもちろん、芸能人としての地位や世間体もある中、一介の門弟になることは、並大抵のことではありません。
その挑戦に至る経緯は、経営者やリーダ-、必見!
そして、読書に対する向き合い方にも好感を抱きました。
かなりの読書家とお見受けしますが、正直、博覧強記のようなタイプではありません。
しかし、その学ぶ意欲の高さ、わからないことに出くわしたときの姿勢に、唸らされます。
その象徴となるのが「わかるまで、わかってはいけない」という言葉。
繰り返し出てきますが、これは人生の極意の1つですね。
『イル・ポスティーノ』、『邪悪なものの鎮め方』、『「象徴』のいる国で」…
本や映画からの引用も思わずメモしたくなるようなものばかりですし、それに対する武田氏の解釈も興味深い。
本から学んだことを活かし、愚直なまでに思考し続ける姿は、見習いたい、というのを超えて心打たれます。
合気道での失敗や、うまくできないことを、自らの日常生活に置き換えて考えていくところも、非常に読み応えがあります。
天才的ではないからこそ、リアルな重みがあり、長く生きてきた中で培われた人間力を感じます。
過去がどうだったのかはわかりませんが、今の老境にある武田鉄矢、間違いなくカッコイイ。
経営者やリーダーの皆さん、本書はいわゆるタレント本ではありません!
この本を読まないのは、あまりにもったいないです。
人生の損失です。
先入観抜きで、だまされたと思って、ぜひとも読んでいただきたい一冊です。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、『マイ・ピアノ・ロマンス』(演奏:ビージー・アデール)
『マイ・ピアノ・ロマンス』(演奏:ビージー・アデール)/amazonへ
です。
米ジャズ界の伝説的ピアニスト、ビージー・アデール。
この『マイ・ピアノ・ロマンス』で日本デビューを果たした時、既に73歳。
そして、いきなり年間ジャズ・アルバム・チャート1位を記録する大ヒットを達成。
その後も立て続けにヒットを飛ばし、昨年84歳で死去するまで、第一線で活躍し続けました。
その円熟の演奏と佇まいは、本書における武田氏と通じるものを感じます。
合わせてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。