前回、ローマからの原稿をお届けしました。
"ローマで論語とは意外な組み合わせ"といったご感想も
いただき、ありがたく拝読しました。
この選書は別に奇をてらったことではなく、
僕にとっては、ある意味、自然なことです。
というのも、
異国にいると、どういうわけか、
日本のことが頭をよぎってしまうのです。
国内にいるときには、さして考えもしないのに(笑)
『論語』は、厳密にいうと日本の本ではありませんが、
日本という国を語るに際して、欠かすことのできない古典です。
そんなこともあって、ふと浮かんできたのだと思います。
一方で、
"イタリアの本や人物について、何か思うところはありましたか"
とのご質問もいただきました。
町を歩いたり、美術館を見て回ったり、
現地の人たちと触れ合う中で、それはそれは、
いろいろ思うところがありました!
一番気になったのは、
チェーザレ・ボルジア、という人物についてです。
チェーザレとは、15世紀のイタリア、
ローマ教皇アレクサンデル6世(ロドリーゴ・ボルジア)の息子で、枢機卿。
…とお伝えするよりも、あのマキャベリが『君主論』の中で
"理想の君主"と讃えたチェーザレ、
といった方がわかりやすいかもしれませんね。
チェーザレがローマで生まれ育ったこともあってか、
彼に関する書籍を多く目にし、強く印象に残りました。
そして、帰国後、一冊の本との出会いで
世界が一変!
それが、今回ご紹介する
『チェーザレ 破壊の創造者』
惣領 冬実 (著)
本書は、いわゆる漫画なのですが、
他に類を見ない質の高いものです。
物語のベースとなっているのは、
最も信憑性が高いと定評ある、
サチェルドーテ著の『チェーザレ・ボルジア伝(本邦未訳)』。
より実像に迫ったチェーザレ像が興味深く、
教皇争いや、メディチ家との絡み、凄まじいまでの権謀術数の数々。
また、"カノッサの屈辱"や、ダンテの『神曲』、
スペインのレコンキスタ、パッツィ家の陰謀事件など
世界史上の有名な出来事も、実に丹念に描かれています。
当時の絵画を参考に、忠実に再現されたイタリアの街並み、文化が
歴史ロマンを想起させてくれます。
1つ1つの絵に重みがあります。
さらに、巻末の資料が秀逸!
用語解説や教養学講義、対談など、
歴史背景を存分に楽しめる構成になっており、
これだけでも読みたい、と思えるものばかりです。
何から何まで完成度が高く、
驚きを禁じえません。
歴史好きな方、『君主論』を愛読する方はもちろん、
人間というものに興味を持つ全ての方に
強くおすすめします!
尚、本書を読む際におすすめの音楽は、
『イタリア・バロック・オーボエ協奏曲集』
シェレンベルガー(ハンスイェルク),イタリア合奏団
イタリアの中世といえば、バロック音楽。
残念ながら、イタリア・バロック音楽の名盤は
日本では入手しにくいものが多いんですが
このCDは気持ちよくお楽しみいただけると思います。
ぜひ歴史ロマンに想いを馳せてみてください。
「運命の女神は臆病者の味方はしない。」(チェーザレ)
では、また次回。