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故事成語に学ぶ(31) 法を棄てて私を用いれば、すなわち上下わかたれず

指導者たる者かくあるべし

 吉本騒動の本質
 表題の言葉は、『韓非子』「有度篇」の結びにある。
 〈リーダーが、賞罰において公正運用という原則を捨てて思いのままに運用すれば、組織内の上下の区別はなくなってしまう〉という意味である。
 連日テレビのワイドショーをにぎわせている吉本興業騒動。話のなりゆきは、あまりにお粗末な社長の謝罪会見と経営責任へと脱線しつつあるが、問題の本質は、所属する複数のタレントによる〝闇営業〟行為と反社会勢力からの報酬受け取りだったはず。そのタレントたちをいかに処罰し、再発防止策を確立するかが焦点でなかったか。
 ところが、会社は、芸人に対して一旦下した「契約解除」という当然の厳罰を、理由も明らかにしないまま、情に基づいて撤回してしまった。つまり「法を棄てて私を用いた」ことが、組織運用上の最大の問題なのだ。
 
 揺れる処分に部下はついてこない
 会社側の会見のつたなさはいうまでもない。社として公式の会見が遅れ、その間に処分を受けた有名タレント二人が、謝罪会見の場で情に訴えて会社側を告発する挙に出た。世論は法を犯したタレント側に同情的となり形勢は逆転してしまった。どうも既視感が拭えない。日大アメフト部の不正タックル問題の成り行きそっくりなのだ。不祥事が起きた場合の組織の公式会見の遅れは致命的なミスとなる。
 さらに、組織としては、処分の姿勢を一貫させる必要があったが、一人について、すでに下された「契約解除」の処分を、理由を説明することなく撤回し、「本人が応じる気があるなら、今後について交渉の席に戻ってきてほしい」と社長は、タレント寄りの世論に迎合してみせた。
 「有名タレントならゴネれば処分も撤回」となれば、同じく処分された無名に近いタレントたちの不満はくすぶり続ける。誰も会社を信用しなくなる。実際、SNSを通じて、所属タレントたちの経営陣批判が、あふれかえっている。韓非子がいう「上下わかたれず」の無秩序状態だ。
 
 「ファミリー」という殺し文句の危険
 「会社はファミリー。われわれ(経営者と社員)は親と子。子が間違ったことを謝ろうとするのを止める親がいますか」と、独自会見を封じられたタレントはテレビカメラに向かって涙で訴えた。それが会社の処分の揺れにつながったのか。
 「会社はファミリー」ーなるほどの殺し文句だ。しかし、、、。
 仲間数人で立ち上げたばかりの会社があるとする。なあなあのファミリー感覚でも経営できるだろう。社員は順調に、百人を超え、千人を抱えるまでになる。同様の経営は無理だ。吉本興業はタレント六千人を抱えるという。ファミリー企業の聞こえはいいが、〝子どもたち〟の一人一人に親の目が届くわけもない。公正に組織を運用するには、親子の情に代えて規則遵守の風土をつくるべきなのだ。
 『韓非子』はこう書く。「人の君主となって、自分で百官を監察するとなると、時間も足りなければ、能力も及ばない。それに上の者が目で見わけようとすると、下々ではうわべの見せかけを飾りたて、上の者が耳で聞きわけようとすると、下々では聞こえよくつくろい、上の者が頭で考えようとすると、下々では弁舌をまくしたてる」
 〈だからリーダーは自分の能力に頼らず、賞罰の規準をはっきりと立てることが大事だ〉と説く。
 昼下がりのワイドショーを見ながら、この警句を思い出している。
 
  (書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com
 
※参考文献
『韓非子 1』金谷治訳注 岩波文庫

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