インターネットバンキング(IB)が進化している。
IBは、パソコンやスマホから銀行の取引明細を照会したり、振込・振替を指示できるもので利用している企業も多い。振込手数料の節減や記帳・振込の手間を削減できるメリットに加えて、ここ最近は外部事業者との連携による業務効率化のサービスが進化している。改正銀行法の施行により、2020年9月までにどの銀行も取引データなどを外部事業者へ開放する、いわゆる「オープンAPI」を進めた。これを機に様々なフィンテック企業との連携も始まり、便利なサービスの開発が進んでいるのである。
APIとはアプリケーション・プログラミング・インターフェースの略で、あるアプリケーションの機能や管理するデータ等を他のアプリケーションから呼び出して利用するための接続仕様・仕組みを指している。銀行の持つ口座情報や入出金の取引データ、振込・振替指示機能などへのアクセスを開放して、フィンテック企業など外部事業者は今までにない新たなサービスを開発している。業務の効率化に直結するサービスも多く、経営に活かさない手はないだろう。
IBの進化により便利になった業務としては、次のようなものがある。
① 仕分け作業の自動化
銀行口座の取引明細を自動取得し、仕訳を自動化してくれる。例えばNTTによる引き落としは、「通信費」として仕分ける。AIによる学習機能も備えて、高い精度で仕分けできるレベルに進化している。
② 入金・支払の消込作業の自動化
銀行口座への入出金データを基に、売掛債権や支払債務の消込を自動的に行う。
月末ともなれば大量の入金が集中し、該当する売掛金と照合し消し込む作業は経理にとって大きな負担となっている企業も多い。見積書の作成から請求書の発行、入金管理、売掛金消込まで売上から回収に至るプロセスを一貫して効率化できるシステムなども出てきている。
③ 振込データの作成
経費承認された申請データなどから、全国銀行協会フォーマットで振込データを自動作成し、社員や取引先への面倒な振込み作業を軽減できる。また、銀行の支店情報などの変更にも対応できるソフトもあり、情報メンテナンスも楽になるという。
④ 複数口座の残高を一元管理
複数の銀行に分散する口座の残高を一元管理することができる。複数の取引銀行の口座に資金が分散している企業は多い。手元のスマホで各銀行の複数口座を一元管理できる事で、資金繰りの把握や機動的な振替など資金管理が容易になる。
このようなサービスは今まさに進化している最中であり、各社がしのぎを削っている。これからまだまだ、新たなサービスが出てくる事が期待される。
サービスによっては、連携している銀行が限られているものもあるが、ある程度知名度のある会計ソフトや販売管理ソフトなどは、殆どの銀行と連携して利用可能となっている。利用したいサービスの機能を定めて、取引銀行との連携状況や使い勝手などを比較調査して活用すれば良い。
参考に、三菱UFJ銀行のAPI連携サービスの一覧表をご覧いただきたい。
※ 三菱UFJ銀行ホームページより
データに基づく経営へ
このようなサービスの進化は、経理事務の効率化、迅速化に効果は大きい。
経理にとって、経費の仕分け作業や売上回収金の消込作業、或いは、経費や賃金などの振込作業は日々の大きな事務負担となっているだろう。
期限までに間違えずに処理するのが当たり前で、間違ったら社長に叱られる。結局、残業までしてなんとか乗り切っている。そんな中小企業はまだまだ多い。インターネットバンキングを活用した進化したサービスを活用すれば、経理事務の作業負担を大きく軽減できる。
加えて重要な効果は、「経営状況をリアルタイムで把握する事」が容易になる事である。
経理が目の前の事務処理に追われしまうと、試算表の作成や販売動向の分析などには着手できず、結局は税理士・会計士に依頼せざるを得ず、数ヶ月遅れでしか経営状況を把握できない事態に陥ってしまう。
しかし、新たなサービスを使う事により、経理部門のエネルギーを事務作業から経営分析へと移す事が可能となる。例えば試算表は、締め日から5日、早ければ3日以内に作成する事も十分に可能となる。経営状況をリアルタイムで把握できるようになるのだ。
変化の激しい経営環境の中で正しい経営判断をするためには、スピードとデータは最も重要なファクターと言える。データに基づく経営を進める上で、インターネットバンキングの活用は1丁目1番地と言っても過言ではない。