「仕事のすすめ方」
◆仕事を円滑にすすめる「コミュニケーションのスキル」◆
前回、「社内のスキルの共有化」についてお話しました。今回は「個々のスキルにばらつきがある場合の社内研修の仕方」についてお話します。
当たり前のことがまだ出来ない方と基本は出来ているのでもう一段アップしたい方が研修に混在する場合があります。このようなケースのとき、私の研修の動かし方のキーパーソンは「基本は出来ているのでもう一段アップしたい方」です。「当たり前のことがまだ出来ない方」は新人さんと考えてよいでしょう。
まず、もっとも大切な「企業理念」の理解からはじめます。キーパーソンに企業理念を発表してもらいます。このとき発表の声の大きさや、企業理念の胆となる大事な言葉をしっかり自分に落とし込んで言えているかを注意して聞きます。もし声が小さかったり、口先だけの心のこもっていない口調であれば数回は言い直してもらいます。企業理念は会社として何を目指しているのかを示しているのですから、本気の発表を求めます。しっかりはっきりした声は、同じ内容のとき小さな声より相手に信頼や安心を伝えられます。(朝礼に企業理念の唱和をしても、小さな声で早口ですませてしまっているなら、唱える必要がありません。時間の無駄です)
次にキーパーソンに「当たり前のことがまだ出来ない方」=新人さんの指導を任せます。任せる内容はビジネスパーソンとして必要な基礎力➀挨拶と返事➁身だしなみ③言葉遣い(特に敬語の正しい使い方。言葉遣いは社格を上げます)④環境整備⑤報告・連絡・相談⑥所作(お辞儀・名刺交換の仕方)などを企業理念と同じ進め方で教えてもらいます。➀でしたら挨拶の意味を考えさせるところから話してもらいます。ここが抜けてしまうと、挨拶の大事な意味がわからないまま挨拶をうわべだけでしてしまう可能性があります。挨拶の意味を納得して良い挨拶の仕方を練習します。その時必ず「練習時間は○分間」のような「納期」を設定します。実際仕事をするときの時間の管理の訓練にもなります。〇分後、新人さん一人一人に発表してもらいますが「新人さんは教えてもらったとおりに発表してください。緊張しなくていいですよ」と言葉をかけます。この言葉の裏には指導した側に責任がありますよという意味を含めています。(※)
明るい挨拶の継続や維持は思った以上に難しいことです。挨拶の出来具合があまりよくないときは、キーパーソンと新人に指導者のあなたから、「挨拶は同じ部署の人やお客様とだけ交わすものではありません。たとえば挨拶する人の幅を広げて他部署の人とも挨拶をしてコミュニケーションをとっていれば、想定外のことが起こったとき、ヘルプをしてもらえるかも知れません。また、2人が気持ちのよい挨拶をしているのを見ている第3者の人も気持ちがよくなりますなど、少し視点を変えた具体例などを伝えてください。
この要領で➁~⑥まで進めます。このパターンの途中ですでにキーパーソンは、言葉に出して指導するには自分の完成度が必要と気づき、受講態度がどんどん真剣になります。
今までキーパーソンが➀~⑥までを何となくこなしてきたとすると、指導をする体験を通して、それぞれの項目の重要さがわかります。見えるもの、感じるもの、聞こえてくるものの幅がふえます。言葉を変えるとキーパーソンは、気づきが増えて自らの仕事の質をアップできたり、今まで雑用と思えていたことなども実は自分の役割としてとても大事だったと納得します。
研修時間にゆとりがあれば、キーパーソンの方のために来客応対や訪問の仕方など、新人さんをお客様役として参加してもらいロールプレイングします。そして指導者のあなたには、研修立場の違う両者に、自ら感じたり考えてもらうため、『教えることと教え過ぎないこと』を頭に入れておいていただきたいと思います。
※社内研修がキーパーソン2人と新人4人であれば、一人のキーパーソンに新人2人つけるという組み合わせにします。