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経済・株式・資産

第40回 企業成長のために売上成長を目指さない経営:「ロック・フィールド」

深読み企業分析

このところロック・フィールドの業績が好調である。アベノミクスに起因するコストアップによって2013/4期、2014/4期と二ケタの減益となったが、2015/4期、2016/4期と挽回し、すでに営業利益は2012/4期を超えた。しかも、10.8%増益予想で始まった2017/4期の第1四半期決算は68.5%営業増益とさらに勢いがついている。
 
今回の同社の利益拡大の特徴は、何と言っても大きな売上増を伴わない利益拡大だという点である。売上が伴わない利益拡大は、しばしば企業のリストラ時に起こりがちな現象で、必ずしもポジティブでないケースもある。しかし、現在の同社の大きな売上増を伴わない利益成長はむしろ次の成長の発射台になる可能性があるのではないかと考えられる。
 
 
 
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売上よりまずはコスト優先
 
次の図にあるように同社の営業利益は1999年まで急成長を遂げたが、実はその後16年間、ピークの25億円を抜けずに来た。過去においてもこのピーク利益が出た時点の翌期の会社計画は常に最高益更新見通しであったが、その都度打ち返されてきた歴史がある。そして、今期も期初計画では10.8%営業増益の28億円と過去最高益を見込んでいる。
 
それに対して、今期に関してはスタートの第1四半期からいきなり68.5%営業増益と、今期こそはと期待を抱かせるのに十分な結果を出した。
 
売上高を見ると業績急拡大の最終年度の1999年度には24億円の営業利益に対して、294億円の売上であった。しかし、2015年度の営業利益は25億円であるが、売上高は500億円となっている。つまりこの間、売上高は増やしたが、利益は全く増えていないことになる。
 
 
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同社の現在の戦略は、まずは売上を追求するより、利益率を上げることである。そして、その後に改めて、売上高を追求することになる。むしろ、収益率を上げる取り組みの中で、売上高を増やす方策も見えてくるのではないかと思われる。
 
現在同社では収益率を高めるための方策として、商品、サービス、製造、物流など様々な面からの施策を講じている。
 
商品面の高付加価値化は過去から継続的に行っていることであるが、次々とメニューバリエーションを広げつつ、価格面も考慮しながら、よそにはない商品を供給することで、ブランド価値の向上も同時に達成しようとしている。そのような商品単品の高付加価値化と並行して、買い合わせ商品を提案することで、客単価を上げる方策も模索している。
 
また別の取り組みとしては、グラブ&ゴーがある。同社のメインの提供方式は量り売りであるが、これだと豪華感はあるものの、繁忙時間帯になると待ち時間の長さからあきらめてしまう人もいる。そのため、パック商品の強化を進めている。これがいわゆるグラブ&ゴー商品である。グラブ&ゴーにより、顧客にとっては待ち時間のストレスがなくなり、会社側には人件費の効率化につながる。
 
一方、生産現場で意外と効果がありそうなのは、ロボットの利用である。かつて、日本では多くのメーカーが工場でロボットを使用して生産性を飛躍的に向上させた時期がある。日本のような先進国では、何と言っても人件費が最大のコストであるので、休まず働くロボットは極めて効率的であり、日本の工場の生産性を大きく引き上げた。
 
しかし、当時のロボットの能力では、形の決まっていないものは扱えなかったり、柔らかいものは扱えなかったり、ウエット環境では使えなかったり制約条件が多かった。つまり、自動車、電機などの輸出産業では急速に普及したが、食品産業や繊維産業など不定形、ソフト、ウエットなどの条件がある工場には普及しなかった。しかし、その後の急速な技術革新によって、ようやくそのような条件下においても、リーゾナブルなコストで稼働できるロボットが出始めているようである。これも工場の生産性向上を通じて同社の利益向上につながっている。
 
同社ではこのようにさまざまな形での効率化を成し遂げることで、収益性の向上に努めているが、これらの施策が効果を発揮することによって、収益性が高まることで、新たな出店余地が生まれる可能性が考えられる。つまり、現時点では同社の製品の価格帯ではある程度出店場所は限定されるが、さらにローコストで商品が提供できるようになれば、必然的に出店のハードルは下がる可能性が考えられる。
 
有賀の眼
 
企業経営を行う場合、売上はどんな企業にとっても最重要事項である。しかし、売上を上げるから利益がついてくるのか、利益を生み出せるから売上を増やせるのかはかなり重要な問題である。これは、そのビジネスの性格と密接に結びついている。
 
極端な例を挙げれば、グーグルやアマゾンのビジネスがある。これらはまさに売上が先のビジネスであり、市場の囲い込みを先行させることによって、必然的に後から利益がついてくる。こういうビジネスはまさに力勝負のビジネスであり、先に市場を押さえたもの一人勝ちになる。
 
しかし、多くのビジネスは必ずしもそうではない。利益を上げられるビジネスモデルを確立した上で、売上を大きく増やすことに費用を投じるべきビジネスも多い。しかし、上場企業でもその辺りを勘違いしている経営者も多い。
 
典型的には総合スーパーがある。売上を増やせば、仕入れ交渉力がつき、さらに有利になるはずだと考え、収益性が低い状況で拡大路線を取り、ほぼ全滅してしまった。一方で食品スーパーは規模拡大よりもその地域にマッチした品ぞろえでファンを増やし、収益性を確保できたところが、今、総合スーパーが衰退する中で、売上と利益を大きく増やし始めている。
経営者は改めて、自社のビジネスを行う市場が、どのような市場かは十分考えなおしてみる必要があろう。おそらく、本質的な部分では、多くの市場は収益性を確保してから拡大に力を入れるべき市場が多いのであるが、売上確保を優先している企業が多いのではなかろうか。
 

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