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第49回 奇をてらうことのない愚直な経営が、一流企業への道を歩ませた「ベルク」

深読み企業分析

ベルクという埼玉県を地盤とする食品スーパーがある。埼玉県といえば、食品スーパー業界の雄と評されるヤオコーの地盤である。ヤオコーは食品スーパーでありながら売上高3,430億円、営業利益145億円、そして営業利益率は4.2%を誇る押しも押されもせぬナンバーワンの食品スーパーである。しかも、前期まで28期連続増収増益を達成するほどの企業である。そのため、全国からヤオコーを見学に来る企業がひっきりなしにあるような食品スーパーである。
 
そのヤオコーとほぼ同じ地盤で展開するのがベルクである。ところが最強の食品スーパーであるヤオコーを向こうに回して、実は互角以上の戦いを繰り広げているのがこのベルクである。図は同社とヤオコーのこの10年強の営業利益推移を比較したものである。実はこの間の営業利益の年平均成長率はヤオコーの7.6%増に対して同社は10.0%増と上回っているのである。その結果、営業利益率もヤオコーの4.2%に対して、同社は4.7%とこれも上回っている。その意味で同社は意外と知られていない一流企業であると言えよう。
 
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しばしば、両雄並び立たずと言われる現象があるが、両社を見れば完全に両雄相並び立つといったところである。両社ともに好調を維持している背景は、そのターゲット顧客の若干の違いと言えよう。ヤオコーはやや高級感のあるスーパーで、所得水準の高い層に支持され、年齢層も高めが中心である。それに対して同社はより庶民的なスーパーを目指しており、年齢層は若年層が多いが、ぜいたくを良しとしない高齢層も顧客として取り込んである。
 
だからといって、単に顧客ターゲットの違いだけで同社が高成長を遂げているわけではない。奇をてらうわけではないが、愚直にやるべきことを着実に成し遂げていることこそ、同社の最大の強みである。もちろん、このことはそっくりそのままヤオコーにも当てはまる。
 
たとえば、同社が売場力の強化として挙げているのが、季節催事で売場に変化を付けて、惣菜では出来立てを訴求し、しかも品切れを極力削減することで、顧客に信頼される売り場作りを行っている。当たり前といえば、当たり前であるが、味・鮮度・素材へのこだわりなどを顧客に訴求し、日々低価格ながら豊かな食生活を提案し続けている。
 
また、顧客にまた来たいと思ってもらうために、「感じの良い接客」を目指し、外部機関に依頼して、カスタマーサービスの確認を実施している。これは顧客視点で40項目のチェックポイントの実施度をチェックするものである。
 
当然このようなことが着実に実行できるためには、社員教育は欠かすことのできないものである。2016年1月に竣工したトレーニングセンターで、生鮮加工技術力の向上、外部講師の活用なども含めて、次世代リーダーの育成にも努めている。このように人にも投資することで、社員のモチベーションを上げて、人手不足時代を乗り切ろうとしている。小売業は比較的人材定着率の低い業種であるが、人手不足の時代にはいかにモチベーションを上げるかが極めて重要であり、その点も十分認識した経営を行っていると言えよう。
 
 
有賀の眼
 
企業経営にとって重要なことは、他社と異なる経営をすることである。これは他社が考えつかないアイディアを考え、実行することと思われがちである。しかし、まじめに考えれば誰でも思いつきそうなことであるが、それを愚直に着実に実行することもまた、他社との大きな差別化になり得る。ただし、他社を全く真似していてもだめである。やはり、目指す方向性は若干ずらしておくなど、ターゲットを変えるということは必要である。
 
もっとも、食品スーパーのように、地域限定で展開している場合は、遠方地の好調企業をすっかり真似ることも一つの正解とは言えるが、それでもプラスアルファ、地域性に合わせる努力は必要であろうが。
 
 

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