menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

経済・株式・資産

第97回「ネット投稿による作家発掘が広げた新たな出版経営のポテンシャル」アルファポリス、スターツ出版

深読み企業分析

■有賀泰夫(ありがやすお)氏
1982年から約40年間にわたり、アナリスト業務に従事し、クレディ・リヨネ証券、UFJキャピタルマーケッツ証券、三菱UFJモルガンスタンレー証券…等で活躍。主に食品、卸売業、バイオ、飲料、流通部門を得意とし市場構造やビジネスモデル、企業風土等に基づく分析と、キャッシュギャップを重視した銘柄分析、売上月次データから導き出す株価10倍銘柄発掘の手法に定評がある。日経アナリストランキングにて常にトップグループをキープする実力派としての活躍し、09年独立。小売業、IT企業にカバー分野を拡げ、機関投資家や個人資産家向けに、独自の分析情報を提供。著書に「日本の問屋は永遠なり」(大竹愼一氏との共著)、講話シリーズに8年に渡り的中率90%を誇る「株式市場の行方と有望企業」シリーズと株式投資の考え方とやり方をテーマ別に解説する「お金の授業 株式投資と企業分析」シリーズがある。


技術進化によって、一つの業界に劇的な変化が起こる現象はしばしば見られますが、特にネット技術の発展は様々な業界に多大な影響を与えています。ネット技術の発展が電子書籍の拡大を通じて、出版業界に大変革を巻き起こしていますが、同じく出版業界に起こしている大変化として、ネット投稿による作家発掘という劇的な変化もあります。

このネット投稿による作家発掘という手法で、高成長かつ高収益を成し遂げているのがアルファポリス、スターツ出版などの出版社です。

アルファポリスの直近8期間の年平均成長率は売上で23.2%、営業利益で20.7%、そして直前決算の営業利益率は28.0%となっています。若干売上、利益の好不調が見られますが、これは自社作品アニメのテレビ放映による特需とその反動になります。

スターツ出版もアルファポリス同様のビジネスモデルで成長していますが、スターツ出版は無料のタウン誌がかつての主要事業で、コロナによってその事業が大打撃を受けて赤字になっていますので、全社でははっきりと成長が見えません。

しかし、書籍セグメントだけを抜き出すと、直近6期間の年平均成長率は売上が20.9%、営業利益が37.8%となっています。書籍だけの比較では売上、営業利益がアルファポリスの30%前後ですが、営業利益率は32.0%とやや上回っています。その結果、今期はタウン誌が元の水準には遠く及ばず、若干回復するだけですが、書籍セグメントの好調で、いきなり過去最高益を更新しそうです。

両社のビジネスモデルはネット上に投稿サイトを設け、広く一般に小説の投稿を募集するものです。誰でも簡単になんの制約もなく投稿できます。そして、一方で、それを一般読者に公開し、人気投票をしてもらいます。もちろん、読者にも作者にも抽選や順位で賞品や賞金がもらえる仕組みにしていることで、投稿者、読者とも着実に増える仕組みを構築しています。そして、その中で人気上位の作品を紙の書籍と電子書籍で出版します。

さらに、それらの中からコミックと相性のいい書籍をコミック化して出版します。電子書籍はコミック化することで、売上高がさらに4-5倍に増えます。コミックでも人気の高い作品にはアニメ化してテレビで放映されるケースもあります。テレビで放映されると、改めて紙と電子の書籍が過去分も含めて人気が復活し、売上増に大きく寄与します。

出版の最大のリスクは、出してみないと売れるかどうかわからないということがあります。しかし、読者に人気のある作品を出版するので、外れるリスクは極めて小さなものとなります。また、本屋を通じて紙の書籍も流通させますが、売上の多くが電子コミックです。電子コミックは印刷代が不要で、配送費も要らず、しかも出版業の最大コストになる返品もありません。それゆえ、一般的な出版社と比較するととんでもなく収益性が高いものとなります。

このような方式は、小説の新しい作者の発掘という点でも出版の全く新しいビジネスモデルと呼べるのではないでしょうか。

有賀の眼

出版業界は長らく停滞していた業界でした。しかし、ネットの普及によって、この両社のようなまったく新しい成長企業が生まれています。もちろん、書店にしても街からはだんだん消えていっていますが、新たに電子書店が無数に生まれて、繁栄している会社も多くなっています。

そして、さらには電子書籍の成長が著しく、電子書籍の成長がいよいよ紙の減少分を上回り始めた途端、コミックに強い会社の利益が爆発的に増え始めています。その結果、集英社、講談社、小学館の出版大手3社の業績が奇跡的な急拡大下にあります。3社合計の純利益はこの20年ほど最大で50億円程度で推移していましたが、この3期間で急拡大し、3社合計の営業利益は何と600億円に増えていて、さらに勢いが増しています。

その結果、それらの出版社を顧客とする新たなビジネスも生まれ、恩恵を被る会社も多く出始めています。まさに今、出版業界は、実は目に見えない世界では、劇的な変化が起こっている典型ではないでしょうか。

第96回「いよいよ実現性高まる豆腐メーカーやまみの成長シナリオ」やまみ前のページ

第98回「改めて感じるコツコツと得意分野を磨く重要性」あらた次のページ

関連セミナー・商品

  1. 社長のための「お金の授業」(年間スケジュール)

    セミナー

    社長のための「お金の授業」(年間スケジュール)

  2. 《シリーズ最新刊》有賀泰夫「2023年からの株式市場の行方と有望企業」

    音声・映像

    《シリーズ最新刊》有賀泰夫「2023年からの株式市場の行方と有望企業」

  3. 【お金の授業】有賀泰夫の春からの小売・飲食・流通株

    セミナー

    【お金の授業】有賀泰夫の春からの小売・飲食・流通株

関連記事

  1. 第56回 好調なドラッグストアがコンビニの強敵に「ウエルシアホールディングス」

  2. 第110回「コロナの危機に瀕して劇的なビジネスモデルの大転換を成し遂げる」シノプス

  3. 第11回 意外な盲点、和菓子のチェーンビジネスで出店攻勢をかける「柿安本店」

最新の経営コラム

  1. 第23回「他者志向と自己犠牲」

  2. 第137回  広角レンズ替わり?スマホカメラ裏技

  3. 第132回『エンニオ・モリコーネ 映画音楽術』(著:ジュゼッペ・トルナトーレ)

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. マネジメント

    第70回 「感謝のルーチン」を持て
  2. 経済・株式・資産

    第145話 北京五輪VS東京五輪 差別化を狙う習近平政権
  3. サービス

    19軒目 「コンセプトが重視される時代に最も輝く店」
  4. マネジメント

    マキアヴェッリの知(8) 追従者を遠ざけよ
  5. 社長業

    Vol.74 「インターンシップ」への取り組み
keyboard_arrow_up