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人事・労務

第113話 モデル本給表が大幅なベースアップを必要とする理由

「賃金の誤解」

モデル本給表とは、賃金管理研究所が推奨する等級別賃金表のモデル水準を示したもので、前年度の賃金統計をもとに、ベースアップ等を加味して毎年設定しています。


このモデル本給表には、大都市圏の基本給水準を示す「大都市モデル」と、都道府県別の地域格差を考慮した「都道府県別モデル」の2種類があります。
さらに企業規模等を考慮し、前者は(高位・上位・中位・下位)の4水準、後者は(上位・中位・ローカル)の3水準に分けて設定しています。現在、2019年版を作成中ですが、今回も前年版の本給表に原則2,000~3,000円程度の定額ベースアップを行います。その理由に、最低賃金の急激な上昇とそれに伴う採用初任給の高騰があります。
最低賃金について政府は「全国加重平均1,000円を目指す」方針を掲げ、この3年間は前年比3%ペースでの引上げが進んでいます。金額ベースでいえば、3年で全国平均76円の上昇です。
これは月平均所定労働時間が160時間の会社であれば、3年間で月額12,160円の引上げに相当します。今年の全国加重平均額が874円ですから目標の1,000円まであと126円、月額換算で20,160円もの金額が、今後さらに上がる可能性があるのです。
そして最低賃金が1,000円に到達したとき、この会社は中卒者であっても160,000円が採用初任給の最低ラインになります。現実的には中卒採用を行っていない会社が大多数ですから、少なくとも高卒の採用初任給で160,000円を超えるよう準備しておかなければなりません。

では、皆さんの会社で実際に賃金表を見直すには、どのような方法を採ればよいのでしょうか。責任等級制賃金制度を導入し、基本給を「本給+加給」で運用する場合は、定額加給や定率加給もしくはその併用によって対応することができ、年々、加給を積み重ねると、より細かな対処方法を採りやすくなります。
例えば、初任給相場の高騰に対応するべく定額加給を行う場合で、上位等級者(管理職等)については給与水準を必要以上に引き上げたくないようなとき、『定率』加給を現状より下げることで賃金カーブの傾きを緩やかにし、上位等級者の賃金テーブルが大きく増加しないように調整できます。
この加給を使うメリットは、本給が退職金制度と連動する場合でも本給表は書き換えずに済むため、退職金に影響を及ぼすことなく月例給与水準を調整できる点にあります。
一方、加給を使わずに見直しの都度、本給表を直接書き換える場合、前述のように、初任給を引き上げつつも上位等級者に影響させないようにするには、Ⅰ等級初号値を引き上げるかたわら号差金額を下げるようにします。
しかし、賃金カーブを抑制することは、必ずしもすべての会社にとって良い方法とは限りません。環境変化による影響をもっとも受けるのは管理職層であり、これまでもバブル崩壊やリーマンショックのたびに賃金を抑制されてきた層です。また、一般職と管理職の相対的な賃金間差が低くなるため、これからの活躍を期待する若い社員にとっても、将来にわたり賃金が増えていく実感を得にくくなります。自社の人員構成などを確認し、適正な給与水準を検討することが大切です。

この2019年版 全国都道府県別モデル本給表(定価2600円税込)は2019年1月21日発売予定です。

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