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社長業

第42回 会社という「群像劇」

繁栄への着眼点 牟田太陽

※本コラムは2022年10月の繁栄への着眼点を掲載したものです。

 「群像劇」とは、登場人物一人ひとりにスポットを当てて描く劇のことである。主人公は一人ではなく、複数の登場人物が相互に物語を作っていく。会社というのは社長一人では出来ない。だから社員が存在する。社長は主人公などではなく、一人ひとりが主人公である。会社は、まさに群像劇と言っていい。

 この何年かで多くの会社が代替わりを迎えている。その中で多くの会社が直面する問題がある。

 日本経営合理化協会は、昭和40年に設立をした。会長の牟田 學と同年代の第一世代と呼ばれる創業メンバーは、約20年前に定年を迎えている。創業メンバーなので歳も近く、ほぼ同時に引退をした。

 その次にくる第二世代は、「人手が足りないと募集、また人手が足りないと募集」という採用をしていたので年齢はバラバラだ。そうすると各部署で役職が空席となるタイミングに時差が生まれてくる。部署によっては若手がスッと昇進したり、いつまでも昇進できない者も出てきてしまうこともある。これにより、「年下のあいつが出世したのに俺はまだ」「自分は会社に評価されていないのか」と感じる者も出るかもしれない。

 日本経営合理化協会を例にしたが、同じような年代に設立した多くの会社が同じ問題に直面をしている。しかも、2025年には定年が65歳に引き上げられる。役職定年制などを真剣に考えないと、「その人が定年にならない限り、そのポジションが空かない」という問題も出てくるだろう。

 新しい試みをする時も同じだ。

 新しい事業であったり、プロジェクトであったり、サービスであったり、始めて直ぐに効果が出るものなど稀だ。他の既存の部署から見ると何をやっているか分からず、もどかしく見えることもあるだろう。やっている本人もそんな空気は感じるだろう。焦りから、「自分がやっていることは会社に貢献しているのか」と悩むこともあるだろう。

 しかし、無駄なことなどない。手間がかかっても種をまかなければ、花が咲くことはない。

 会社は群像劇である。

 その劇において、全ての人に同時にスポットライトが当てられることはない。スポットライトは順番に回ってくるものだ。自分の順番は必ず来る。その時がいつなのかは誰も分からない。いつでも100%の力を発揮できるように準備をしておかなければならない。愚痴を言い腐っている暇はない。

 社長は、「根回し」という伏線をいくつも張り巡らせて全ての登場人物に光が当たるようにしなければいけない。それが会社という群像劇である。

※本コラムは2022年10月の繁栄への着眼点を掲載したものです。


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