※本コラムは2023年3月の繁栄への着眼点を掲載したものです。
全国経営者セミナーにて歴史家の加来耕三先生にお話をいただいた。
加来先生に初めてお会いしたのは2002年の全国経営者セミナーだった。その後、後継社長塾のゲスト講師としてお願いするようになった。「歴史から見たリーダー論」というテーマで毎年お話をいただいている。私も何度も拝聴している。
日本人は、「変身モノのテレビ番組が好きな人種だ」と先生は言う。水戸黄門、仮面ライダー、ウルトラマン…ある時間になると全く別人に変身して悪を倒す。なるほど先生の言う通りかもしれない。実際にそういったテレビ番組、映画など流行る。「人は時間が来たからといって都合よく全くの別人に変身などしない。
歴史上の有名な人物も、小説、テレビ番組が創り上げたイメージであることが多い」というのが先生の持論だ。
先生の話には大変共感をした。歴史に対する見方も確実に変わった。
20年という時間が経ち、私の感覚は変わった。「人は役割を自覚することによって変われる」というのがいまの私の考えだ。勿論、努力なくして変わることはないが。実際にここ数年でそのような人を何人も見たからだ。
全国経営者セミナーに10数年ぶりに参加された方がいた。何でも地元の親しい経営者に相談をしたところ、「だったら何で太陽さんに訊かないんだ」と怒られたと言う。久しぶりに会う彼は全然変わっていなかった。彼を私がやっている会に連れて行き隣に座らせて相談に乗った。そのメンバーは当時の彼を知っている者ばかりだ。
彼の悩みを聞くと、ここ数年のうちに社長に就任するのだが、自信がないということだった。父親は創業者なので全て0から一人でやってきたが、自分にはそれがない。できるのは営業だけ。自分にできるのだろうか。彼はポツリと言った。「でも営業はできるのでしょう」そう訊くと、彼は、「営業でしたら父より長く現場を踏んでいるので私の方が詳しいです」と言った。そんな彼に、「だったらそれでいいじゃないか。十分だよ。ここにいる20数人を見なさい。皆二代目、皆同じだ」と返した。「それと一番重要なことが一つ」と私は付け加えた。
彼は、「自分にできるのだろうか」と言った。強く願うことは疑問形ではいけない。必ずできるという強い意志が無くてはいけない。人は自分の役割を自覚したら変わっていける。
父親の急逝で急に会社を継ぐこととなった女性がいた。当時は経営のことなど何も分からなかった。社員は全員年上の男性。社員、取引先、銀行の視線から、「お前みたいな小娘が社長になるのか」「この会社は大丈夫なのか」そんな幻聴が聞こえるほど精神的にまいったこともあった。毎日陰で泣いていた。
そんな20代の女性が、いつまでもそのままであったら会社は無くなっていただろう。「経営の恩師に出会い変わった」とご本人から聞いた。今の姿からはとても想像できない。
そんな会社を何社も見てきた。必ずできるという強い意志を持つこと。自分のことを当の本人が信用しなければ、一体だれが信用するというのか。自分の限界を自分で決めてはいけない。
※本コラムは2023年3月の繁栄への着眼点を掲載したものです。