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戦略・戦術

第137話 「銀行借入時の抵当設定に気を付けよ! その2」

強い会社を築く ビジネス・クリニック

「担保に頼らない融資をせよ!」「過去に設定した担保も外しなさい!」と、金融庁は銀行に指導しています。
しかし実際には、担保に頼る銀行融資は、今も続いている、と前回申し上げました。
 
例えば、抵当権設定された物件の登記簿を見せてもらうと、ひとつの土地に、銀行や保証協会などがズラズラズラッと、並んでいることがあります。
第5順位、第6順位の設定をみかけるのも、さほど珍しくありません。
5番目や6番目の順位で、担保設定していても、取り分なんてないんじゃないか、と、思っていました。で、ある会社の銀行交渉の場で、実際に銀行員に尋ねたことがあります。
“こんな低い順位で担保設定しても、意味ないでしょ?”
その方は、地銀の支店長でした。その支店長は言いました。
“それが、意味あるんですよ。順位が何番目だろうと、担保設定さえあれば、  銀行内での審査を通しやすいんですよ。”と言われました。
要は、営業マンとして、社内稟議を通しやすいわけです。だから、順位なんて、どうでもいいのです。担保設定の有無そのものが、彼らには重要なのです。
 
“それに、担保物件を処分するには、全ての担保設定者の同意が必要になります。なので、5番目や6番目であろうと、上位のライバル銀行が物件を処分しようとする際に、牽制が効くんですよ。”というわけです。
つまり、抵当権の順位が下位でも、いっちょかみすることで、担保対象物件を、ライバル銀行の好きなようにはさせない、ということができるのです。
だから、ひとつの銀行が担保設定した物件には、ライバル銀行は是が非でも、担保設定に絡んでおきたいのです。
 
しかしながら、オフバランス(総資産の圧縮)による資産圧縮など、思い切った財務改善をしようと考えたときに、すべての抵当権を解除する必要があります。抵当権設定が複数あると、この手間が増えるのです。
私たちは、「含み損のある土地は別会社に売却して総資産を縮めなさい!」と申し上げています。そのことを、オフバランス(総資産の圧縮)と言います。
“土地は銀行の担保に入っていますが、大丈夫でしょうか?”
との経営者の疑問には、
“売却で得たお金で、借入残金を返すなら、銀行はOKします。それを、「有償解除」と言います。”とお伝えしています。
 
ある会社で、土地売却のオフバランスを進めていた時のことです。
まずは、売却する土地の、担保状況を確認してもらいました。
“6番まで、銀行の「根抵当」がついていました!”
その会社の後継者から、連絡がありました。さらに、
“6番までのうち、今はもう借り入れも取引もない銀行の「根抵当」が、3件も残ってます!”と言うのです。
あとの3件は、何らかの形で借入や取引が残っている銀行でした。
とにかくまずは、借入残も取引きも何もない、3件の銀行から、「根抵当」の解除手続きを進めることになりました。その後、時間をかけて残り3件の抵当解除を進めたのです。オフバランスを進めるには、「普通抵当」も「根抵当」も、すべて解除する必要があるのです。
この場合も、かなりの時間と労力がかかったのです。
 
また、すべての担保設定を解除したとしても、登記簿には、抵当や根抵当の履歴が残ります。
「〇〇銀行で借りて、2億円の抵当設定をされたんですね。」など、すぐにわかります。抵当設定が解除されても、その履歴はいつまでも登記簿から消えない、ということなのです。
「平成◇◇年◇月◇日 〇〇銀行 抵当権抹消」
などといった記載になるだけです。
履歴は延々と残るのです。それがイヤだな、という経営者もいます。
 
この、抹消されたのに、消えない抵当履歴を登記簿から消すにはどうすればよいのか?ある司法書士にお尋ねしたところ、
「方法がないこともないです。」と言われました。
「ないこともない、ということは、あるんですか?」
「まあ、あるといえば、あります。」
「もったいぶらずに、どんな方法ですか?」
「分筆とか合筆すれば、消えます。」
とのことでした。
 
つまり、分筆なら、土地を2つに分ける、合筆なら、他の土地とくっつけてひとつの土地にする、といったことです。
分けたり、くっつけたりするのは、ほんの小さな一部分の土地でも構いません。
小さい土地であっても、分筆、合筆すれば、新たな土地登記となり、過去の抹消された抵当履歴は、消えるのだそうです。
登記簿は、法務局を通じて、誰でも入手できます。ライバルが見る、銀行が見る、行政が見る、など、さまざまな用途で、見られることがあります。
過去の担保履歴を知られたくないこともあります。末梢された過去の担保履歴を消し去りたいなら、このような方法が、あるのです。
 
今どきの銀行交渉では、不動産を担保設定しないのが当たり前です。
しかし、過去の担保設定が残っている場合はぜひ、内容を再確認し、設定解除の交渉を進めてほしいのです。

 

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