私ほど経営会議に出席する人間はいないと自負しています。42年間経営コンサルタントの生業をしてきた私にとって経営会議への参加は大切な業務なので す。
先日、久しぶりに感激、感心、感服する二代目経営者にお目にかかりました。
議題は、その企業の宣伝広告の一大変更についてでした。提案者は企画部長、25年間提供している番組を替える、タレントを替える、広告代理店 を替えることでした。提案者の部長は元・中小企業の経営経験者でもあった中途採用者の論客でした。
質問する者、反対意見を述べる者、どっちつかずの意見を言う者。各責任者から賛否両論が出て意見が伯仲いたしました。熱気をおびました。(創業者の前の会長がいらっしゃる時はこんなに熱気をおびる事が無かったとのこと)
議案提出者の企画部長は質問や疑問や反対論者が意見を言うたびに、応酬反論するので、私もおもわず「意見に耳を傾けなさい!」と注意するほ ど、その案を通すことに夢中になっている。勿論、賛成論も出るのですが・・・・
意見が出尽くした頃を見計らって、二代目若社長(先代は引退)が、自分の感想をはっきりした意見として申されました。その意見は、斬新で経営 責任をもった者の重い発言でした。
思わず私が、感動した事は、皆の意見を十分に聞き、咀嚼し、そして自分の意見として発言する。一番最後にビシッと決めたことでありま す。
若いトップであろうと、老いたトップであろうと、とかく社長は最初に意見を言ってしまう傾向がある。最初に言ってごらんさない、誰も反対意見 は言えなくなるのである。
権力をもった人間は兎角、自論を通したくなる。又、通せるのです。
しかし、多くの失敗は、左右・上下の異なる意見の中に貴重な意見があるのを知らず、自論を通してしまう事です。
賢明な人物とは、その人自身の頭脳が賢明なのではなく、賢明なる多くの知恵や知識を吸収して、賢明なる意見として聞きとれることの出来る人な のでしょうね。
もしあえて言わしてもらうと、経営コンサルタント井上和弘が、賢明な売れっ子コンサルタントだと思っていただけるならば、それは世の中の優れ た賢明なる経営者の成功セオリーを利用させていただいているだけなんです。
自分自身が賢明などとは一度も思ったことはありません。
よーーーく、みんなのやる事を見て、意見を聞くだけです。
意見を発言する人は、会社に「よかれ」と思って発言するのです。多くの他人の意見を冷静に聞く事によって「そうだったのか」ということに出会 えるのです。