盆があけていよいよ税務調査が本格化します。
読者の皆様のなかには、税務調査の予定がもうすでに入っている、
という会社もあると思います。
クライアントの会長、社長とお話しすると、
意外に経営者の皆様、税務調査のことを知らないな~、と思うことが少なくありません。
今回は、これから本格化する税務調査のポイントをお話ししましょう。
●税務調査は拒否できないが、日程は変更できる
税務調査で指定された日付は、変更できないと思われている方が多いですが、
繁忙期やイベントと重なっていたら、とてもじゃありませんが対応できません。
査察(マルサ)が入る場合は強制調査ですが、通常は、任意調査です。
任意調査は、会社の協力がなければ進めることはできません。
ですので、都合がつかなければ、日程を延長してもらうことは可能なのです。
●税務調査の期間は、短くできる
顧問先の税務調査の状況を聞いていると、最近の調査では、
『予定よりも早く終わりました。』という声を聞くことが多いです。
これはどういうことでしょうか?
税務署は、最初に指定した期日から、日程を延長することはできません。
だから、保険をかける意味でも、最初の予約時には、
調査の期間を長めに設定することがよくあります。
早々に何か指摘があれば、最終日を待たずして退散する、というわけなのです。
ということは、税務署から「税務調査に入ります」と電話があった際に、
最初から、日程の短縮交渉をすればよいのです。
1週間を3日あるいは4日と短縮できれば、それだけで精神的なストレスは軽くなります。
●調査対象とする期間
基本的には、直近3年分しか見られません。
ただし、重加算税(仮装、隠蔽)に該当する指摘があった場合など、
調査官が悪質な所得隠しだと認定した場合は、5年分遡ることがあります。
いわゆる期ズレ(売上を先延ばし計上する、あるいは、経費を前倒し計上する)は、
重加算税とはならないので、これが見つかっても、5年分さかのぼることはしません。
ちなみに、期ズレをチェックする場合は、
決算月直前の3~4ヶ月あるいは、決算後2カ月程度は、チェックされます。
私が、『中間決算を行って、対策は早めに打つべし』と申し上げるのは、このためです。
●修正申告は例外的な対応です。
税務調査で指摘があった際、
原則的な取り扱いは、更正決定(こうせいけってい)です。
これは、税務署自身が、会社の誤りを正さなければいけない、ということです。
税務署からすると、この手続きは大変面倒です。
本音を言えば、できるだけ更正決定をしたくありません。
そして税務署が更正決定するからには・・・
・ 確実に勝てるもの
・ 確実に間違っているもの
この2つのいずれかの場合しか、更正決定しません。
金額が小さい場合は、『少額不追及』といって、追及しません(更正決定しません)。
更正決定には時間もお金もかかります。
そして、もし、更正決定をした挙句に裁判で負けたら、確実に人事評価が下がります。
こうしたリスクを考えると、更正決定には二の足をふむのです。
ということは、私たちは、税務署に『更正決定してください』と言うべきなのです。
●『重加算税です』と言われても、冷静に
重加算税をとられると、ペナルティは重たいです(追徴課税 35%)。
そして、前科一犯として、今後、税務調査がくる可能性が高くなります。
さらに、次の税務調査でまた重加算税となった場合は、ペナルティが更に重くなります。
(追徴課税 45%)
今回は、少額で済んでも、次回の調査で多額の重加算税が指摘されれば、
追徴額もバカになりません。
ですから、重加算税の処分だけは、必ず避けなければいけません。
重加算税とは、『仮装、隠蔽』に該当する場合を指します。
例えば、次のような場合は重加算税には該当しません。
・今期の売上を来期に繰り延べたとき
・来期の費用を今期に前倒し計上したとき
・在庫を過小評価しているとき
・交際費または寄附金(損金に算入できない費用)を、他の科目に計上しているとき
ところが、現実には、上記のような事例でも、
調査官が『これは重加算税ですね!』と圧力をかけてくるのです。
なぜなら、重加算税は、税務署内の人事評価でポイントが高いからです。
極端なことを言えば、棚卸の集計ミスがあった場合でも、
『これは意図的に数字をごまかした』と言われる可能性がある、ということです。
こういう場合、どうすればよいのでしょうか?
この場合、すぐに税務署の言いなりになって、認めることは絶対におやめください。
この場合でも、先ほどと同じように税務署が意図的に仮装、隠蔽したという証拠を、
見つけて立証しなければいけないのです。
ですから、『これのどこが仮装、隠蔽なのでしょうか?証拠をお示しください。』
と反論すればよいのです。
皆様の会社の税理士は、このようなことを教えてくれるでしょうか?
私が見ている限り、税務調査で戦ってくれる税理士は少数派です。
経営者として、最低限は、これらの知識は身につけていただきたいと思っています。
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