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製造業

第176号 「今日中」ではダメです

柿内幸夫─社長のための現場改善

 今回は、日本各地の駅前に立つ偉人の銅像を写してきました。どの像も存在感バツグン。こういう面白いモノを見つけるのが、私の出張の楽しみのひとつなのです。

●長浜の羽柴秀吉公と石田光成公

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●甲府の武田信玄公

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●岡山の桃太郎公とお供たち


kaki176-3.jpg 今回のテーマは、日付に関する言葉や数字の扱い方です。

 先日M社の改善会で材料倉庫をチェックしていた時のことです。すべての材料に納入された日付が記入されているのですが、すべて12月15日といった月と日のみの記入でした。

 私はそれに気付いて、「まさか、おととしの12月15日ではないですよね?」と聞いたところ、担当者であるKさんから「もちろん昨年末の12月15日ですよ」との答が返ってきました。

 私の指導を受けている方でしたらもうお分かりかもしれませんが、私はこういう場合は必ず「ナゼ」で始まる質問をします。この場合は「ナゼ分かるの?」でした。だって12月15日というのは毎年必ずありますからね。

 それに対するKさんの答は「私が書いたからです」でした。なるほどそれなら間違いはないですね。しかし、Kさんがその倉庫内のすべての日付を書いているわけではないのですから、それで納得するわけにはいきません。

 すると、私がまだ何か言いたそうなのを察知したのか、Kさんは続けて「ここにあるほとんどのモノはすぐに使い終わりますから、年を記入する必要はありません」と言いました。

 こういう時、現場・現物には強い力があります。本当かな?と、ちょっと奥の方に足を運んで探してみると、まあ、みごとに薄汚れた古そうな袋がありました。そしてありがたいことに(?)、その袋も12月の日付でした。

 「これも二ヶ月前の12月ですか?」と袋を持ち上げてKさんに尋ねると「それはちょっと違うようですが、私がやったことではありません」と早速に言い訳モード。


 ここまで読まれた皆さんは既にお気付きと思いますが、やはり日付は年月日でなければいけません。きちんと事実を特定できる言葉や数字でなければ、表現としては不正確です。

 ほとんどのモノがすぐ使われると言う意味は、一部のモノはすぐに使われないということです。そして、たとえすべてのモノがすぐ使われるという前提であっても、実際にはいろいろな滑った転んだが起きることは想定するべきです。やはり、すべてのものを年月日表示にするべきでしょう。

 これまでに事故が起きなかったからこれから先も大丈夫、という考えには全く根拠がありません。品質事故や安全事故というものは、そのすべてが起きる一秒前までは安全だったはずです。

 起きて初めて「しまった!」と思うのです。まさに「後悔先に立たず」。再発防止では遅すぎます。未然防止が大切です。そして、この場合の未然防止は年月日表示です。

 日付にまつわる事故はとても多いものです。材料が腐ったりカビたりしやすい食品業界ではもちろんのこと、製品が腐ったりカビたりしない電機業界でも、例えば、接着剤の日付管理を間違えて、市場ではがれのクレームが発生したりしています。

 例えば「今日中」という言葉は、とても幅が広いです。今日と言っても厳密には24時間ですし、会社の業務時間としても最低でも8時間の幅があります。そして、その間であればいつでもいいですというアバウトな表現が「今日中」です。

 「この部品をいつまでに完成するのか?」という質問に対して「今日中」と言えば済んでしまう会社と、「今日の10:30まで」と言う会社では、工程間の在庫の量に大きな違いが出ていることでしょう。そして会社全体となると、膨大な差がついていることと思います。

 私は現場で改善の約束をしてもらう時には必ずいつまでに終える予定かを確認します。その時に「来月中」という答は許されません。3月には1日(月)から31日(水)までの大きな幅がありますから。

 少なくとも「3月の第二週中には完成させます」といった答がほしいのです。一番嬉しいのは、「柿内さんが帰ったらすぐに始めます。明日の午後には完成させます!」のような答でしょうか。そういう時、私はぐずぐずしないで、喜んですぐに失礼することにしています。(みんなはもっと嬉しいかもしれません…。)

 今回の宿題は、昔からそうなので慣れてしまっている表現であっても、それが事実を正確に伝えているかを改めて現場でチェックすることです。

 特に日付は入念に見てみてください。字が乱暴で読めないとか、インクが薄くて読めないといったこともかなりありそうですよ。

kaki176-4.gif

copyright yukichi

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net

 

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