<社員の幸せを考えるブレない経営とは?~事例:ボーズ>
勝ち組と負け組が明確になる今、経営者の判断がブレると会社は、これから負け組に入ってしまうでしょう。しかし、経営者の判断が理念を軸に、ブレなければ、会社は、生き残り、勝ち残ることが可能です。
なぜなら、先行きの見えない日本で現場は、経営の判断が常にブレない会社なら、その会社を信頼して“ついていこう”と思い、顧客の声に耳を傾け始めるからです。
会社は、永続する必要があり、永続させるには儲からなければならず、そのためには、顧客の声を聴き、必要とされる会社になり、利益を生み出すことが不可欠です。
経営者は代わりますが、変わらぬ経営理念を軸にブレない経営を実践し、会社の風土を築けば、現場が一つとなり、顧客になくてはならない会社には何が必要か?探り当てることができるのです。
そこで18回連載を終わり、今回からは全3回で“イノベーション(革新)”をキーワードに顧客の支持を獲得している会社を事例に、経営理念により現場士気を向上させ、それを売り上げに結びつける仕組みを、解説いたします。
~“好奇心”マインドが、消費者目線でイノベーションを起こす!~
推定売上高は約3千億円、従業員約1万人。非上場を貫き、株主はボーズ博士ら約20人のみ。
日本へは77年に本格進出し、日本では小型ステレオ「ウエーブミュージックシステム」の販売に注力。
株式上場せず、短期的な利益を追わない。もうけは研究開発に充て、株主配当はゼロ――。
ボーズ(Bose Corporation)という会社は、経営理念を軸にこのようにブレない経営をすることで、顧客の支持を得ている音響機器メーカーです。
同社は、マサチューセッツ工科大学(MIT)で電子工学の教授を務めるアマー・G・ボーズ博士により、1964年に設立されました。
そのきっかけは、ボーズ博士がMITの大学院生であった1950年代に新しいステレオを購入したにもかかわらず、その素晴らしいスペックを誇るスピーカーが実際の演奏とは程遠い音しか再現できないことに愕然とし、研究者としての好奇心がこだわりとなり、単品スピーカーを開発するに至ったからでした。
今ボーズ博士が世に送り出した単品スピーカー(特許)のシェアは米15%、欧州10%といずれも首位(調査会社調べ)となっているのですが、多くの会社が単品スピーカーのような特許を保有しながらも有効活用できず、なぜボーズだけがイノベーションを通して、その特許を商品化でき、顧客の支持を得ることができたのでしょうか?
その秘密は、博士自身が研究者ではなく、消費者の目線でモノを見て、その結果ことを提供することに成功したからなのです。
~今までにないことを提供すればイノベーションが商品化される~
ボーズ社が一躍有名になったのは<ノイズキャンセリング機能>が付いているヘッドフォンです。
この機能の研究開発を始めたのは78年。
きっかけは、創業者のアマー・ボーズ博士が欧州の出張帰りに乗った飛行機内で、当時珍らしかったチューブ式ヘッドホンが、エンジン音にかき消されて音楽がよく聞こえず、音量を上げると音が割れてしまった体験だったのです。
ボーズ博士は、本社に戻るとヘッドホン開発の専門グループを立ち上げ、成果は86年、無給油・無着陸の地球一周飛行「ボイジヤー」の飛行士がつけるヘッドホンに試作品と採用された時で、その仕組みとは、耳当てをつけただけでは騒音は消えない、音を伝える空気の振動を感知し、それとは逆の音波を出すという、これまで誰も考えつかなかった方法でした。
同社はこの独自技術を一般用ヘッドホンにも応用した結果、<ノイズキャンセリング機能>が一般ユーザーを対象とする商品となり、この商品が一般ユーザーが抱く悩み(機内の騒音)を解決し、それが今までにないこと(機内の静けさ)の提供となり、大ヒットにつながりました。
~経営理念がなければイノベーションは活かされない!!~
ボーズ社の経営理念は
「Better Product thorough Research」
(研究活動を通じてよりよい製品を顧客に提供すること) です。
そして、同社は、この経営理念を軸に創業者であるボーズ博士が説く
「社員を重視、利益は研究に」を常に現場でも最優先しています。
ボーズ社がオンリーワンである、その強さは、
創業者ボーズ博士自身が率先垂範したイノベーションにありますが、
その目的が、経営理念の実現でありながらも、
その経営方針として、まず社員を重視した施策をとったことです。
企業が生き残り、勝ち残るために、これからイノベーションが不可欠です。
が、イノベーションが活きてくるには、イノベーションを通して、
企業で働く全ての人が経営理念の実現を目的とし、
現場が日々真摯な姿勢で実践することで、
現場ベクトル(向かうべき方向)が一つになることなのです。
ボーズ社は、イノベーションを通じて、株主重視の「米国流経営」を実践するのではなく、社員重視の「米国流経営」を実践することで、掲げる経営理念を実現しています。
つまり、
ボーズ社は、日本企業が経営理念を軸に、今後イノベーションを戦略ツールとすることで、ブレない経営判断をし、生き残るため(顧客に選ばれるため)に「何をすべきか?」、その経営戦略をも示してくれているのです。
ボーズ社HP
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