★時間がなくても大事にしたい、盛りだくさんの「ベビーイベント」
最後に注目したいのは、赤ちゃんの誕生や成長を祝うためのイベント。
これまでも生後1ヶ月前後を祝う「お宮参り」、生後100日前後を祝う「お食い初め」、生まれて初めて迎える節句を祝う「初節句」などの伝統的なイベントはありましたが、そこにさらにInstagramやTikTokなどのSNSから入るようになった情報の流入も受けて、海外のベビーイベントも日本でも行われるようになっているのです。
例えば生まれる子どもの性別を、おにぎりやケーキでお披露目する「ジェンダーリビール」。赤ちゃんの「Gender(性別)」を「Reveal(明らかにする)」という意味で、家族や親しい友人の前で行います。海外では定番のイベントでしたが、日本でも実施する人が増えています。中にイチゴが入っていれば女の子、マスカットが入っていれば男の子の「ジェンダーリビールケーキ」
海外ではよく知られていた、妊娠中の姿を写真に残す「マタニティフォト」も、日本で流行し始めています。お腹が大きくなった妊娠後期に撮影するのが一般的で、マタニティフォトの特別プランを用意しているフォトスタジオも増えています。
東京都代々木の住宅街の中にある隠れ家的スタジオ Holidays PhotoServiceは、予約が数か月先まで埋まっているほど人気のフォトスタジオ。家族と、そして幼い子どもの表情を引き出すプロで、自然でおしゃれな家族写真が残せるということで評判です。
InstagramなどのSNSを活用して、自分の好みの世界観の写真を撮影してくれるカメラマンを選ぶ人も増えています。
「Holidays PhotoService」のマタニティフォト
https://www.instagram.com/holidaysphotoservice/
https://hps-tokyo.com/
ハーフバースデーはアメリカやイギリスで行われていたバースデーイベントで、長期休暇中に誕生日を迎えて友達にお祝いしてもらえない子のために、誕生日の6か月前や6カ月後に学校の友達でお祝いしようというもの。
これが日本では、赤ちゃんの生後6か月を祝うイベントとして広がりました。赤ちゃんの成長を祝い、家族内でのお祝いや記念撮影をする特別な日として位置付けられるようになりました。
生後半年を祝う日本の「ハーフバースデー」
他にも、生まれてくる赤ちゃんと妊婦さんをお祝いするパーティ「ベビーシャワー」、出産まで残り100日となったことをドーナツで祝う「100日ドーナツ」、生後間もない新生児期の赤ちゃんを撮影する「ニューボーンフォト」、生後1ヵ月から毎月定期的に行う写真撮影「月齢フォト」、1歳を迎える赤ちゃんのために用意する、手づかみで豪快に崩しながら食べる「スマッシュケーキ」など、妊娠中から出産後までイベントは盛りだくさんです。
少子化が進む中でも、子ども1人あたりにかける金額が増えており、イベントにもしっかりお金を投じている様子が見られました。
★時代を読み解く3つのキーワード
今回のテーマ「令和のベビー市場はなぜ堅調?②知育・保育と、盛りだくさんの、『ベビーイベント』への投資」から抽出できるキーワードは以下の3つです。
❶多少無理してでも子どもの教育に投資したい
子ども1人あたりにかけられる金額も増えており、市場の選択肢が成熟する中で、保育・教育の質に対する意識の高まりも見られます。特に、早期教育と言語教育は、子ども将来のために重要な投資とみなされています。
❷時間がなくてもイベントは大事にしたい
家族で子どもの成長の節目を祝うイベントは、時間に追われる現代の親たちの中でも優先順位高く、大切にされています。これらのイベントを通じて、家族の絆を深めたり、子どもの成長を記録したりすることに、時間とお金を惜しみなく投資する親たちの姿勢が見て取れます。SNSの普及の影響もあり、こうした家族の大切な瞬間を保存し、共有することが一層重視されるようになりました。
❸時短したいけど、情報は集めて、こだわって選びたい
現代の親たちは、限られた時間の中で最良の選択をしたいと考えています。これは、情報収集への強い意欲と、子どものための商品・サービスに対する「質」へのこだわりを示しています。親たちは教育、食事、保育、そしてレジャー活動に至るまで、各分野で最適な選択肢を求めています。賢い選択をするためには、信頼できる情報源からの充実した情報と、SNSを活用した同じような価値観を持つ他の親たちからの口コミが欠かせず、情報を厳選して参考にするということも増えています。その選択プロセス自体が親たちにとっての価値ある「投資」となっているのです。
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阿佐見綾香(あさみあやか)
電通第4マーケティング局マーケティングコンサルティング部・戦略プランナー。企業や商品・サービスのマーケティングや商品開発、リサーチ、企画プランニング、コミュニケーション戦略立案などを担当。GIRL’S GOOD LAB(旧・電通ギャルラボ)研究員として、時代とともに変化する女性インサイトと消費トレンドを研究。著書に『電通現役戦略プランナーの ヒットをつくる調べ方の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)。
ビジネス見聞録WEB10月号 目次
・p1 収録の現場から 〈新将命の「社長塾」音声講座〉
・p2 講師インタビュー【爆発的な利益《利益爆発》を生み出す社長の姿勢】平美都江氏
・p3 今月のビジネスキーワード「ヘルステック」
・p4 令和女子の消費とトレンド「令和のベビー市場はなぜ堅調?②」
・p5 展示会の見せ方・次の見どころ
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