私は幸せなことに、これまで三人のメンター(師)に恵まれた。
人生の節目の相談にのってもらったり、心がざわつく時などに、言葉少なに酒の相手を務めていただき、
心の安らぎを取り戻すお手伝いをしていただいたり…と、様々にお世話になってきた。
一人目のメンターは、シェル石油、つまり大学を卒業して最初に入社した会社の上司だった宮城仁之助さんだ。
温厚でありながら、骨太で懐の深い方で、シェル石油を飛び出したのちも、しばしば教えをいただいた。
二人目のメンターは、福田常雄さん。日本でただ一人、加齢評論家と称した方で、楽しく年をとる方法などを、
こまごまと教えていただいた。
三人目のメンターは、マッキャンエリクソン博報堂の筆頭副社長になった宮沢明さん。
人格的に文句なしに尊敬できる方で、尊敬のあまり、この方には、息子の仲人までお願いしてしまった。
実はもう一人、かなり辛辣な、だが、かけがえのないメンター、いや、メンター以上の存在がある。
それは、ほかでもない、わが妻である。
長い人生を運命共同体のパートナーとして生きてきたのだから、当然といえば当然なのだが、究極の相談相手は、
つねに妻であった。
言葉は辛口だが、なんといっても私を知り抜いている。最近は貫禄もついてきて、ますます、頼もしい存在に
なっている。
そして私は、本に関しても、三人の著者の本を、おりおりの指針としてきている。
一人目は、デール・カーネギー氏の本だ。19世紀末のアメリカの農家に生まれ、記者、俳優、営業職などをへて、
人間関係スキルの先駆者となった人である。
私は、カーネギー氏の著作「人を動かす」や「道は開ける」から、基本的な人間関係や、コミュニケーションの
基礎について、多くのことを教えられた。
二番目のメンターとなった著者は、安岡正篤氏だ。
人間学の基礎は、「人間としての成長」や「運を開く」など、安岡氏の著作に負うところが多い。
三番目のメンター的な著者は、ピーター・F・ドラッカー氏である。「経営者の条件」などの著作を通じてなら、
こうした世界的な存在も、自分のメンターに取り込むことができるのだ。
本を読まない人生は、あまりにももったいない。
一方で、私自身も、後続のビジネスマンのメンターになるべく努力をしている。
自ら、ビジネスマン育成のための私塾を開いているのだが、塾生の何人かは、私をメンターと認識してくれて
いるようだ。
私は公私にわたり、彼らの様々な相談にのっている。
こうして、ささやかながら人のお役に立つことも、人生における無上の喜びのひとつだ。