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第10話 定番商品に風穴を開けた、四季の塩

北村森の「今月のヒット商品」

今、天然の塩を作っている拠点は、全国に300ほどは残っていると聞きます。料理が趣味(といいますか、必要に迫られて作っている)私など、地方出張で興味深い塩に出合うたびに購入していますが、先日、ちょっとびっくりしたのが、この商品です。
 
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180グラム入りの袋で、税込955円。ちょっと高めですね。でも、驚いたのは、その値段ではないのです。上の画像に目を凝らしてみてください。「冬塩」って、パッケージに書いてあるでしょう。
 
どういう話かというと、ここの塩、1年通して同じ海水からこしらえているんですが、商品は4つあります。「春塩」「夏塩」「秋塩」「冬塩」。それぞれが955円ということです。
 
ちなみに、数量限定ですけれど、こんな商品もラインナップされている。
 
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春夏秋冬の塩を比べられるセットで、これは税込4320円。
 
同じ海水が元なのに、仕込む季節によって、味が違うものなのか。わざわざ別商品に仕立てる必要があるのか。
 
いや、口にしてみて分かりました。本当に違う。と言いますか、口にする前から違いが見て取れます。塩の粒の感じまで異なるんですね。
 
どんな感じか。味わいの違いが生まれる理由を含めて、取材してきたこと、実際に試したみたことをお伝えしますと……。
 
春塩は、海藻が茂ってくる頃の海水から作られます。これ、天然のダシが効いているような感覚です。この塩で鯛の潮汁を作ってみたら、驚くほどに味わいが膨らみました。
 
夏塩は、最もパンチがある。梅雨を経て、森のミネラルが海に流れ込んでいる海水なのですね。牛のステーキ肉を焼いたのにぶっかけると、力強さを発揮しました。
 
秋塩はどうか。辛さや甘み、苦みなどのバランスが一番取れていると感じさせます。これは塩むすびがいい。秋になったら新米でも試してみたいなあと思いました。
 
そして冬塩。とてもあっさりしています。触った感じも、パウダースノーのようにふんわりしている。静かに春を待つ海水から塩を作ると、こうなるのですね。冬の白身魚の刺身に合わせてもみたいですが、こういうのも良かった。
 
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この冬塩をカクテルのソルティドッグに使ってみたら、絶妙な1杯になりました。
 
何が面白いかって、わざわざ4つの商品にしてしまっている部分ですね。こうした季節ごとの違いというのは、天然塩作りに携わる人であれば気づいていたはず。だけれど、季節ごとに商品化するのは結構面倒な作業でしょうし、事実、こうした例は、他ではまずなかった。
 
分かっていたけれども、手間やコストを考えて商品化までは踏み切らない……。世の中にはそんな事例はたくさんあるはずです。でも、ここはやった。そこがまた痛快なところです。こうして商品化してくれないと、私たち一般の消費者はその面白みに気づかないままです。
 
こうしてできた季節ごとの塩は、通販だけでなく、東京・銀座の人気スポットであるGINZA SIXでも取り扱われているほどと聞きました。
 
お伝えするのが遅くなりました。いったい、どこが作っているのか。
 
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山口県長門市の北西端、日本海に面した油谷湾という地に拠点を構える、百姓庵です。この油谷湾一帯は、森から注がれる淡水、そして海水が混じり合う汽水域であり、その水は塩作りには絶好なのだそうです。ミネラルの宝庫でしょうからね。
 
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油谷湾から汲み上げた海水を、まず2週間かけて立体式の塩田で濃縮していきます。太陽と風の力で海水が濃くなってゆく。これ、室町時代から続く製法らしい。
 
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次に薪をくべた釜に移して1週間炊いていきます。さらに、塩を煮詰めながら、しっかりと上下に混ぜっ返す。「天地返し」という手法で、この作業によって、海の成分に限りなく近いミネラルバランスの塩に仕上がるそうです。かなり手が込んだ塩だということも分かりました。
 
それにしても……。繰り返しになりますが、海水のありようが違うのだから、それぞれを商品にしようと思い立つ生産者がもっといても不思議ではなかったはず。でも、実際に商品化した事例はほぼなかったという話ですね。
 
言われてみたら、膝を打つ。言われるまでは、気づかない……。これ、商品のヒットを生む、ひとつの大事な要素かもしれないとすら思いましたね。
 
 

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