テレワークの普及にともない、見積書や請求書などを紙に印刷して押印し郵送することなく、インターネット経由でPDF形式等のデジタルデータのまま送受信するのが一般的になりました。
この「電子取引」を利用すると、時間もコストも節約できるのがメリットです。
デジタルだと仕事の効率が上がるので、「電子取引」を利用する会社が増えつつあります。
一方で、「電子取引」の取扱いに関しては、電子帳簿保存法により一定の要件に従って電子データを保存することが義務づけられることになっています。
このため2023年中に、電子取引の経理処理について、準備が必要になります。
そこで今回は、電子取引のデータ保存の対応について、説明します。
御社は電子取引を利用していますか?
⚫️2024年1月から電子取引のデータ保存が義務化
電子帳簿保存法により、「電子取引」は原則として電子データを保存することが義務付けられています。
ただし、電子データ保存のシステム対応ができていない企業については、2023年末まで電子データの保存義務が猶予され、紙に印刷して保存することも認められています。
この猶予措置が延長されるか注目されていましたが、2023(令和5)年度の税制改正において、2024年1月から電子取引のデータ保存の義務化が原則通り開始されることが明らかになりました。
中小企業においても、電子取引のデータ保存が待ったなしでの対応を迫られることになったのです。
経理事務の運用管理上、電子取引を紙に印刷して処理すること自体は問題ないのですが、原本の電子データの保存は今後必ず必要になります。
すべての企業の経理部門は、2023年中に電子取引のデータ保存について対応しなければなりません。
御社の経理は、電子取引のデータ保存について準備していますか?
⚫️電子取引のデータ保存方式
電子帳簿保存法において、電子取引のデータの保存の仕方については、次のような要件が定められています。
・登録修正削除等の履歴が管理されている
・画面に表示して閲覧できる状態にある
・条件検索が可能である(日付、金額、取引先)
これらの要件を満たすためには、電子帳簿保存法に対応したシステムやクラウドサービスを導入するか、社内で事務処理規程などを作って運用しなければなりません。
2024年以降、電子取引のデータ保存要件を満たしていなかった場合には、税務調査のときに、紙に印刷した書類だけではなく、電子データのダウンロードを要求されることになります。
PDF形式の請求書を日付や金額で検索して画面に表示できますか?
⚫️電子取引データを社員のパソコンに保存するのは危険
電子取引のデータは、修正削除履歴が記録された状態で保存されていて、税務調査において調査官が必要に応じて取引内容を検索し閲覧できるようになっていることが求められています。
したがって、電子取引のデータを受信した社員のパソコンにそのまま保存しておくだけではダメなのです。
例えば、Eメールで受信したPDF形式の請求書を紙に出力して事務処理し、経理では出力した紙を保存している場合が想定されます。
経理で保存している電子取引を出力した書類は写し(コピー)ですので、税務調査においては原本の電子データのダウンロードが求められます。
最悪の場合には、取引担当者のパソコンのデータやメールの送受信履歴なども調査対象になりかねません。
会社としては、調査官に実際の取引とは関係のない顧客や業者とのやりとりなどまで閲覧されて、余計な疑いまでかけられることがないようにしたいものです。
そうならないように、電子取引のデータは、社内のファイルサーバーやクラウドサービス上で運用ルールを定めて保管すべきです。
電子取引の税務調査の対応準備はできていますか?
⚫️電子取引のデータ保存は早めの準備が大切
今回は、電子取引のデータ保存の対応について、説明しました。
ポイントは次の3つです。
・電子取引は2024年1月からデータ保存が必須
・データの履歴管理や検索機能が必要
・税務調査でデータ提供を求められるリスクあり
デジタル化で経理業務が効率化されていきますが、それに対する備えも必要です。
データ保存のシステム対応や事務処理規程の作成には時間と費用がかかりますので、2023年のできるだけ早い時期に準備を始めることをお薦めします。
税務調査も紙の帳簿と書類を検証するやり方から、ペーパーレスで電子データを検索するやり方に変わっていきます。
税務調査の通知があってから慌てないためにも、電子取引のデータ保存は早めに準備しておきたいところです。
社長としては、経理社員や顧問の会計事務所と打合せをして、自社の電子取引の保存方式や税務調査の対応の仕方について、すぐに検討しておきましょう。
デジタル化後の税務調査を想像できていますか?