前回、「苦手な人とも上手にコミュニケーションを取る方法」についてお話をしました。今回は「感謝の気持ちを上手に伝えるコミュニケーション」についてお話します。
皆さんは「感謝の気持ち」をどのような言葉で相手に伝えていますか?「もちろん『ありがとうございます』です」とお応えがすぐかえってきます。有難いことに私たちの母国語である日本語は語彙がとても豊かです。中学生の頃、国語の授業で「雨」を表す言葉の種類の多さに驚いた記憶があります。梅雨・五月雨・秋雨・春雨・時雨・雷雨・霧雨・驟雨・小ぬか雨・長雨・豪雨など、雨の降り方や量、季節によって細かく呼び分けられる名詞が数多くあります。(ここに書いたのはほんの一部です)私たち日本人は言葉において基本的に繊細さを持っているように思います。
ビジネスにおいて、私たちは感謝を伝えるとき「ありがとうございます」の中に全ての気持ちを含めて言ってしまいがちです。例えば具体的にどのようなことに感謝しての「ありがとうございます」なのか、「ありがとうございます」の前に具体的な言葉を添えるとその意味が相手により伝わりやすくなります。なぜそのようなことが必要であるかというと、「十人十色」という諺があるように相手が自分と同じ感じ方や考えとは限らないからです。情報の伝達であるコミュニケーションを取るときには、相手に自分の気持ちを正しく伝え理解していただく言葉を添えることがとても大事です。
何故話したのに私の気持ちが伝わらないのだろうかと思うことはありませんか?そのようなときは無意識に自分ファーストの立ち位置で言葉を選んで、使ってしまっているはずです。齟齬が生じないためにも自分の気持ちを常に正しく「言葉」にする意識を持ちましょう。意識があるとだいぶ防げます。
一般的に気持を添える言葉として、
・心より感謝いたします
・深く感謝いたします
・お心遣いいただきありがとうございます
・ご配慮いただきありがとう存じます
など一言加えると印象がアップします(「ありがとう存じます」はあまり聞いたことがないかも知れませんが、目上の人に使える正しい敬語です。同僚や目下の人には使えません)。さらに『具体的に気持を言葉に表現する』と、相手への感謝のレベルが自分の中で深くなり、○○さんに○○○○をして良かったと具体的に喜んでいただけます。
私の体験の一例です。初めて伺った会社の女性担当者にお暇のご挨拶をいたしましたら、「○○駅の改札に入ると近くにエレベーターがありますが、それを通り越してその先の下りエスカレーターをご利用ください。電車のドアが開くところがすぐ近くです。」とにこやかにおっしゃいました。私はそのようなお声かけをいただいたのは初めてでしたので、お声かけいただいた瞬間の気持ちをそのまま言葉にして、「電車のドアの開閉位置に近いという細やかな情報をいただきありがとうございました。」と思わず申してしまいした。)(この時の「ありがとうございました」の音声表現には抑揚を「り」と「ざ」の二ケ所に乗せました)そしてそのコミュニケーションは、駅までの約5分間鼓膜にずっと気持ちよく残っていました。
帰社してすぐに、その日のお礼のメールを打ちましたが、その中に「電車のドアが自分の前で本当に開きました」とお礼のタイミングを逃さず書き添えました。お礼のタイミングは、一回目その場で・二回目は帰社してから出来るだけ早く・三回目は次回の電話もしくは対面のときと「三回」を覚えておきましょう。丁寧さが伝えられます。蛇足になりますが、「感謝」や「ありがとうございます」という言葉を意識して言うようにすると、その言葉を使うのに慣れて、今まで当たり前と感じていたことにも「感謝」や「ありがとうございます」の気持ちを抱きやすくなります。その感覚がより良いコミュニケーションの素地を作ります。
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