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税務・会計

第46回 経理の“お役所仕事”を改善する「3つのポイント」

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 形式的で非効率、不親切な仕事ぶりを称して「お役所仕事」と言うことがあります。民間企業でも、総務や経理などの管理部門の仕事は「お役所仕事」になりがちです。
 企業の経理部門では、手続き的な事務処理に追われ、業務が「お役所仕事」的になっているのをよく見かけます。会社のお金を預かる経理部としては、ルールを遵守するのが仕事ですから、ある程度はやむを得ないことです。
 しかし一方で、ルールを厳しく運用しようとするあまり、業務効率が悪くなり、スピード感がなかったり、融通が利かずにサービスレベルが低いままでは問題があります。
 そこで今回は、経理部門の業務が「お役所仕事になっていないか」を点検して、改善を促す3つのポイントについて説明します。

社長は、いまの経理の仕事のやり方に満足していますか?

 


形式的な前例踏襲のやり方は、トップダウンで変える

 「お役所仕事」の1つめの問題は、融通が利かないということです。その理由は、決められたことを、決められたやり方でしか処理できないからです。
 以前の国や各地の役所では、必要事項を記入してからハンコを押して、書類申請するのが決まりでした。それがコロナ禍のテレワーク環境で、紙とハンコによる手続きが問題になりました。そこから、書類の形式的な認め印を不要にし、オンラインでの申請を受けつけるように変わりました。コロナ禍の社会情勢の変化が、お役所仕事を変えたのです。

 民間企業の経理はどうでしょうか?
 コロナ禍でテレワークに移行するためにペーパーレス化を促進し、社内の紙とハンコを廃止した会社もあります。
 しかしいまだに多くの会社では、経費の支払いなどを紙の書類で申請しています。担当者、上司、経理など複数人がハンコを押して、紙の書類を回して作業するやり方を続けているケースも多く見られます。

 役所でさえ変わったのに、民間企業の経理は「お役所仕事」をやめられないでいるのです。
 役所も民間企業も現場レベルでは、仕事のやり方を変えられません。
 役所の場合、国がトップダウンで紙とハンコを減らす方針を打ち出して、行政手続き全般が変わりました。
 このように現状に合わない仕事のやり方は、トップダウンで変えていきます。
 社長がペーパーレス化を推進する方針を打ち出せば、経理の仕事から紙とハンコがなくなります。仕事がもっとスムーズに進むようになるのです。

御社は、紙とハンコをいつまで続けますか?

 


経理に「課題を設定」して改革を促す

「お役所仕事」の2つめの問題は、働く人が効率の悪い処理の仕方を自ら改善しようとはしないことです。業務時間内に、“指示された仕事”を“指示されたやり方”で処理するだけだからです。
 仕事のやり方を工夫して短時間で終わらせたり、新たな課題を見つけて解決したりするような、出過ぎたことはほとんどしません。やり方を変更して失敗するリスクを恐れて、改善による成果や成長を望まなくなってしまうのです。

 経理の仕事も、そのように陥りがちです。毎日、毎週、毎月のルーティン作業が決まっています。同じ作業を繰り返すうちに、自分の作業の非効率さに疑問を感じなくなっていくのです。
 しかも、仕事のやり方を変更し改善するには、作業手順の変更や、周囲への調整など、普段より仕事が増えて面倒です。
 変更したとしても、確実に成果が得られるとは限りません。しかも、失敗して非難される可能性もあります。そうだとしたら、何も変えずにこれまでどおりに“指示された仕事”を“指示されたやり方”でしていたほうが楽なのです。

 しかし企業は、非効率的な仕事の仕方を続けているわけにはいきません。効率が悪い仕事をしていると、他社と比べて生産性が劣り、競争に負け、会社自体の存続ができなくなります。

 ですから、社長から見て、経理に業務改善の姿勢が感じられないときは、課題を設定して、改革を促す必要があります。
 経理事務に手作業が多く、非効率なやり方をしているようであれば、積極的にITツールを導入して、抜本的な改革を指示することも必要です。

御社の経理の仕事は、昨年と比べてスピードやコストが改善されていますか?

 


社長は、経理に改善要求をする

「お役所仕事」の3つめの問題は、サービス精神が低いことです。「何をすればユーザーが喜ぶか?」を考えないということです。

 経理社員は、自分のユーザーが誰なのかを見失っていることがあります。
 経理にとって、会計報告する利害関係者がユーザーです。会計情報を最初に報告するユーザーは社長です。
 第一のユーザーである社長が求めている会計情報を、スピーディーにわかりやすく報告することを工夫しながら仕事をしている経理社員は、残念ながら少数派です。
 それよりも、経理の仕事を監査する会計事務所や税務署に注意されないように仕事をしている経理社員のほうが多数派といえるでしょう。

 サービスはユーザーの声を反映して改善されます。
 社長は、経理に改善要求をしてください。

・社長は、どのような会計情報を必要としているのか
・社長は、いつ頃、どんな形式で、会計情報報告をしてほしいのか

 社長は経理に具体的に伝えてください。社長のクレームと改善要望が、経理のサービスレベルを向上させるのです。

社長は、御社の経理のサービスレベルに満足していますか?

 


社長が経理に関心を示すと、経理社員の意識が変わる

 今回は、経理の仕事が「お役所仕事」になっていないかを点検して、改善を促す「3つのポイント」についてお伝えしました。
 定期的に御社の「経理の仕事」を検証して、改善を促していきましょう。

①「経理の仕事」を、環境の変化に適したやり方に変更しているか?
②非効率な仕事を疑問視して、「経理の仕事」を改善し続けているか?
③経理は、ユーザーである社長のリクエストに応えているか?

 経理の仕事をよく知らない社長ほど、専門業務に対して余計な口出しをしないように遠慮しがちです。
 しかし、社長がユーザーの立場で改革を促さない限り、「お役所仕事」は改革できません。
 社長が無関心でいると、経理の仕事は「お役所仕事」に陥っていきます。
 社長が時間をとって、経理社員に業務のやり方や現状の問題点、課題について聞いてあげてください。社長が関心を示すと、経理社員の仕事に対する意識や改善意欲が変わってきます。
 古い体質の経理部門ほど、社長が仕事のやり方に首を突っ込んで、トップダウンで業務を変革していきましょう。

社長は、経理社員から業務について話を聞いたことがありますか?

 

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