一方的な消費税相当額の引き下げは下請法違反
2023年5月に公正取引委員会が公表した事案は、次のようなものです。
「発注事業者が、経過措置(注)により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、取引先の免税事業者に対し、インボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合には、消費税相当額を取引価格から引き下げると一方的に通告した。」
(注)免税事業者からの課税仕入れについては、インボイス制度の実施後3年間は仕入税額相当額の8割、その後の3年間は同5割の控除ができることとされている。
要するに、インボイス制度開始後から一定期間については、免税事業者との取引でも消費税相当額の全額が控除できなくなるわけではないので、一方的にインボイス制度開始時から消費税相当額を全額支払わないというのは認められません。
したがって、免税事業者との取引に関しては、消費税の経過措置を考慮して、価格の見直しをするようにしてください。
具体的には、インボイス制度開始後3年間は消費税相当額の8割程度、その後の3年間については5割程度を価格に転嫁することを許容する前提で対応することが望ましいと考えられます。
インボイス後の免税事業者との価格改定の基準を検討していますか?
下請け業者との価格交渉は十分に注意
今回は、免税事業者との価格交渉における注意点について、説明しました。
ポイントは次の3つです。
・インボイス制度の支援措置を免税事業者に案内して登録を推奨する
・免税事業者に対する取引交渉ルールを社内で徹底しておく
・経過措置に応じた価格交渉を行う
これから、免税事業者との間で価格の見直しを進める会社がほとんどです。
その前に、社内で消費税相当額の転嫁基準を取り決めておきます。
最終的に免税事業者を選択する取引先に対して、取り決めた価格設定基準を説明した上で、個別に取引価格の見直し交渉をするようにしてください。
インボイス制度開始前までに、すべての免税事業者と交渉を終えておきましょう。
免税事業者との価格交渉をいつまでに終える予定ですか?
(参考)
国税庁「適格請求書発行事業者の登録件数及び登録通知時期の目安について」令和5 年6月13日
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/kensu_kikan.pdf
公正取引委員会「インボイス制度の実施に関連した注意事例について(令和5年5 月)」
https://www.jftc.go.jp/file/invoice_chuijirei.pdf
財務省リーフレット「インボイス制度、支援措置があるって本当!?」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/invoice.pdf