はじめに
前回は、最近話題のICレコーダーについて選び方を中心にご紹介しました。今回の後編では、様々なシチュエーションで、良い音、良い状態で録音するためのヒントやテクニックをご紹介します。カメラの撮影が腕次第なように、レコーダーでの録音も基礎知識やノウハウがあると、失敗を減らし、より良い状態で安定した録音ができます。
「高級機=良い録音」とは限りません。安価なレコーダーを上手く使いこなすのも一案です。
■基本1: 録音フォーマット選択
ICレコーダーでは、音質を重視するか、長時間の録音を重視するかが選択できます。良い音質で録音すると記録できる時間は短くなります。
録音フォーマット選択のポイントは、目的に応じた最小限の音質で録音する事。データ量を減らす事で、同じ記憶容量のICレコーダーのより長時間録音でき、また、パソコンにデータを転送する際も短時間で済みます。
以下、ICレコーダーの記憶容量が4GBの場合の録音時間目安です。
■ 基本2: 録音レベル
録音したけど音量が小さくて聞こえない・・・とか、音が歪んで内容が聴き取り辛い・・・といった失敗はよくあります。高音質な録音フォーマットを選択していても、録音レベル(感度)の設定が不適切だと、良い状態では録音できません。
設定のポイントですが、ICレコーダーにはマイク感度の設定項目があり、詳細は各製品の取扱説明書の確認が必要ですが、概ね、ボイスメモのようにマイクの間近で話す場合は感度を「低」に、インタビューのような距離感なら「中」、大きな会議で少し遠い発言者もいる場合は「高」にすると良いでしょう。
趣味の録音で音質を重視する場合、録音レベルメーターを確認しながら、なるべく音量が大きく且つ最大音量(ピーク)が0dBを超えないように調整します。こうする事で、充分な音量と歪みの無い優れた録音ができます。
*レベルメーターが振り切れている例。この場合、音が歪んでしまうので、録音レベルを下げる必要がある。
■ 基本3: ノイズの低減
録音したけど、周囲のノイズ音で肝心の発言内容が聞き取り辛い・・・という事も多いはずです。
屋外で風は強い場合は、風切り音が気になりやすいので、風防を利用しましょう。風防が無い場合は、ICレコーダーに内蔵されているノイズ低減機能を使うと良いでしょう。製品によっては、喫茶店などで気になりやすい周囲の会話や騒音を低減してくれます。
その他にも、「指向性切換」機能で、音を拾う方向を狭めれば、周囲がざわざわしていても、狙った音をしっかり録音する事ができます。
その他、オフィスで気になりがちなのは、映像を投影するプロジェクターのファン騒音。ICレコーダーは騒音源から出来るだけ遠ざけるようにしましょう。
■ 応用編: 用途別にマイクを選ぶ
ガンマイクで狙いの音を録る
指向性の非常に鋭いマイクで、遠くの狙った音を録音するのがガンマイクです。テレビのスタジオで、客席付近から出演者の声を拾う、細長い棒のようなマイクもガンマイクです。
多くのICレコーダーは外付けマイクが接続可能で、市販のガンマイクを接続して録音が出来ます。大会場で講演者が遠い場合に役立ちます。指向性が強いので、周囲の雑音を拾いにくいのも利点です。
*マイク部に風防を取り付けた例。屋外での録音で威力を発揮。
電話の通話内容を録音する
外付けマイクには様々な用途に向けた様々なタイプの製品があります。電話機から漏れ聞こえるような小さな相手の声を録音するには、専用のマイクを利用しましょう。
■ その他 のコツ
テーブルにICレコーダーを直接置くと、メモを取るペンのコツコツ音や肘を付く衝撃音が録音されてしまう事も。ハンカチなどクッションとなるモノを敷きましょう。こうすると、机の表面を反射した音も拾いにくく、音質面でも有利です。
■ さいごに
録音に際しては配慮もお忘れ無く。無断で録音されるのは気持ち良いものではありませんし、アメリカでは州によって無断録音が違法行為として訴えられるケースもあります。録音の際は、マナーとしても、相手の承諾を得るようにしたいものです。
また、許可を得ても、レコーダーが目の前にあると、本音を話し難くなる傾向があるようです。録音していても、肝心のお話しが引き出せなければ、本末転倒ですね。目的や雰囲気に応じて録音しない・・・という判断も必要かもしれません。