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第79話 「流儀のある宿」の再開を願って

北村森の「今月のヒット商品」

能登半島地震からの復旧・復興のために、少しでもできることはなんだろうか、と毎日考えています。

今回は奥能登にたたずむ宿の話をさせてください。4月からの営業再開を目指して頑張っている小さな宿です。

今は行けませんがタイミングが許す段階でぜひ再び足を運びたい、そんな一軒です。

その名を「湯宿 さか本」といいます。石川県珠洲市の郊外、林の中を貫く小道を進むとたどり着きます。

 

宿のウェブサイトのトップページに綴られているテキストは、なかなかに挑戦的にも移ります。「大いに好き嫌いを問う宿」「いたらない、つくせない宿」…。

 

確かにクセのある一軒と表現できるかもしれません。接客は手厚い感じではないですし、わずか4つしかない客室のしつらいも質素です。朝夕の食事は開始時刻が決められていて、原則としてほかの宿泊客と同じ卓ですごす形態です。

 

ただし、宿での滞在を通して受ける印象は、決して冷たいものではありません。淡々とはしていますが、接遇からは温かみを感じますし、一見(いちげん=初めて訪れる)客にも優しい応対です。

 

で、この「さか本」、県内だけでなく、東京や大阪をはじめとした大都市圏にも、この宿をこよなく愛するなじみの客を多く有しています。一度はまると、繰り返し来訪する人がかなり多いのです。

 

木造建築で、聞けば奥能登に古くからある建築手法に則ったものだそう。黒光する瓦屋根が目を惹きます。敷地内の池の脇には、洒脱なゲストハウスも別棟でしつらえてあり、滞在中(そしてチェックアウト後も時間の許す限り)好きなだけ、のんびりとすごせます。

玄関をくぐると、土間の一角にかまどがあります。もちろん、ただの装飾物ではなくて、お正月にはこれに火をくべて、お米を炊き、宿の人とお客が一緒に前庭で餅つきに興じたりもします。

 

さらに奥へと進むと、居間です。晩秋からは囲炉裏と薪ストーブが空間を暖めてくれます。

この宿を訪れる楽しみのひとつがお風呂です。緑礬泉(りょくばんせん)が貼られた湯船の先に竹林が広がっています。夕暮れはきれいに日が差してきます。

 

肌に優しく、またよく温まるお湯で、滞在しているあいだ、何度も浸かりたくなる、そんなお風呂です。

滞在のクライマックスは夕ごはんです。塗り物の椀などに載って、奥能登の食材を存分に生かした料理がひと品ずつ、ゆっくりと運ばれてきます。締めに登場するのは、いしる(魚醤)を塗った焼きおにぎり。これを目当てに来訪するなじみ客もたくさんいると聞きます。

 

いや、クライマックスはもうひとつありました。あくる朝のごはんもそうです。飛竜頭(ひりょうず=がんもどき)は、揚げたてで目が覚める絶品です。朝から地酒を一杯頼みたくなってしまうほどに…。

 

「さか本」での滞在を終えるたびに思います。宿というのは「流儀」が必要であり、その「流儀」に共感するために訪れるものかもしれない、と感じるのです。この宿は。冒頭で触れたように、好き嫌いを問います。もっと豪華で利便性あふれる客室を求める人もいるでしょうし、食事はご自身の好むタイミングで始めたいという人もいるでしょう。

 

でも、「流儀」のない宿に人は強く惹かれないというのもまた、大事なところと私は考えます。「さか本の流儀」にうまくはまれば、季節を変えて二度、三度と訪れたくなるに違いありません。これはなにも、宿に限った話ではありませんね。メガヒット狙いの大手企業による製品・サービスでは、広く、多くの消費者を振り向かせる必要がときにありますけれども、小規模な事業者の場合には、少数でも確実に熱烈なファンを創出するほうが賢明という場合がしばしばです。そのときのカギとなるのが「流儀」にほかなりません。

 

営業再開となり、奥能登に行けるようになったら、改めて「さか本」の空間に身を委ねたいと考えています。宿からそう遠くない場所には、おいしいコーヒー焙煎所や酒蔵もありますし…。

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