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第35回 社員の幸せを考えるブレない経営とは?~事例:ベン&ジェリーズ~

オンリーワンで勝ち残る企業風土づくり

勝ち組と負け組が明確になる今、経営者の判断がブレると会社は、これから負け組に入ってしまうでしょう。しかし、経営者の判断が理念を軸に、ブレなければ、会社は、生き残り、勝ち残ることが可能です。

なぜなら、先行きの見えない日本で現場は、経営の判断が常にブレない会社なら、その会社を信頼して“ついていこう”と思い、顧客の声に耳を傾け始めるからです。

会社は、永続する必要があり、永続させるには儲からなければならず、そのためには、顧客の声を聴き、必要とされる会社になり、利益を生み出すことが不可欠です。

経営者は代わりますが、変わらぬ経営理念を軸にブレない経営を実践し、会社の風土を築けば、現場が一つとなり、顧客になくてはならない会社には何が必要か?探り当てることができるのです。

そこで33回連載を終わり、全3回で“起業”をキーワードに会社が企業風土をどのように経営理念とリンクさせれば顧客を創造できるか?を、現場士気を向上することで売り上げをアップさせている会社を事例と共に解説いたします。
 
 
~起業時の想いを軸にすれば、経営はブレない!!~
ベン&ジェリーズ は、1978年アメリカバーモント州で創業されたプレミアムアイスクリームで現在(2015年)世界35カ国に展開(日本では関東を中心に4店舗、又小売店300店舗で販売)、米国では絶大な信頼を得、アイスクリームの分野では売上げNO1を誇っています。
実はこの会社、今となっては経営において重要視されるようになったフェアトレード(関係者が等しく潤いある生活を送れるように材料費にフェアな金額を支払うこと)を今から40年近く前の起業時にブレない経営軸として掲げ、ビジネスを成功へ導いていたのです。
 
~会社の存在目的は売上げアップだけでは達成できない!!~
創業者である中学と高校の幼なじみの二人ベン・コーエンとジェリー・グリーン・フィールドは、1977年、ペンシルベニア州政府を通して5ドルで受講できるアイスクリーム製造の通信講座を見つけて受講。
その後二人は、競争相手の同業者がいない出店地(平均年齢が若く大学生人口も多い田舎町)を見つけ(空き家のガソリンスタンド)、互いに8,000ドルづつ出し合い、4,000ドルの借入をして、計12,000ドルを元手に1978年5月5日、手作りアイスクリーム店を開店します。
 
開店当初には1つ買うと1つ無料であげるというサービスをしながら、1980年には卸売りを開始。
翌年、最初のフランチャイズ店をオープンしたまではよかったのですが、生活を犠牲にした仕事という長時間労働による売り上げアップでは、“地域社会に根ざした企業になりたい”という起業時の目的達成へ向けての道のりは確かなものに見えず、二人は、「もう十分にやったと思うしかない…」と起業時の想いを断念し、会社を売りに出したのでした。
 
~起業の想いの実現がビジネスの拡大に情熱を吹き込む!!~
 「会社を売ることは人生で最悪の失敗になるだろう、世の中のビジネスのやり方が気に入らないというのなら
違うようにやってみればいい、君が会社の経営者じゃないか」
 
当時意気消沈していた二人に、創業者であるベンの友達で80歳のレストラン経営をしている芸術家は、こう忠告したのでした。
 
二人はこの言葉に励まされ、会社の売却を中止、自社の在り方を会社の存在目的とし以下のように定めました。
 
ベン&ジェリーズの目的とは、自社のビジネスのやり方(これまでの<世の中のビジネスのやり方>ではない)で、ビジネスが社会発展の力になると同時に、存続させる
 
二人は早速、1984年販売拡大のための新しい製造施設建設を計画し、自社のビジネスの存続がイコール社会(地域)発展になるか?を、自社の株を12株単位126ドルで、地域の顧客に対して直接公開販売を開始することで、検証しました。(会社の15%の株式を販売して75万ドルを地域の顧客から集める)
 
すると地元バーモント州の100分の1世帯、1800世帯が株式公募に申し込み、会社の存続を社会(地域)が望んでくれていたことが実証できたのでした。(その後も追加の建設費用をまかなうために数回株式を引受業者と共に販売、常に売り切れ)
 
~起業の想いが会社の存在意義=ブランドイメージとなる!!~
ベン&ジェリーズ は、1981~87年の間にフランチャイズ店を約50店舗オープン。
さらに87~88年には販路拡大に集中して60店舗を出店し、その後はフランチャイズ店を育成し、同社のブランドイメージは、次のように表現され、全米で知らない人はいないほどになります。
 
<ベン&ジェリーズの企業イメージ>
「牛の群れと緑の牧草地が広がるバーモント州。ここに住む、気がよく、あったかい二人の男が、世界で一流のアイスクリームをかなり独特の味で作っています」
 
多くの顧客がこの会社(店舗)を支持する本当の理由は、起業時の想いを忘れず、同社が世界に誇るアイスクリームの美味しさで “地域社会に根ざした企業になりたい”という存在意義に立ち上がったからなのです。
 
~社会に貢献する会社の仕組みとは?!~
二人はフランチャイズの店舗が増える(拡大)ことで自分たちの起業時の想い(“地域社会に根ざした企業になりたい”)が各店舗に伝わらなくなるのでは?と案じ、1988年には、会社の進むべき方向を一つにすべく、店舗で働く全員が会社の存在意義を常に意識できる社是を作り、人が育つ仕組みをつくり上げました。
 
<ベン&ジェリーズ社是>
1.進歩的で不偏不党の社会的な課題を持つ
2.争いを解決するための非暴力な方法を支援することによって平和を求める
3.フランチャイズ契約を失った人たちに、経済的な機会を提供する方法を探す
4.思いやりのある資本主義の実践に貢献する
5.環境への悪影響を最小限にすることを目指す
6.食品製造と家族農園を支援する
 
同社は又これまで社会の固定観念であった、企業とはお金を作り出す機械であり、お金(利益)は企業のために動くものであって、その埋め合わせをするために慈善事業があるという考え方をかえるために、創業者ベンは自身の5,000株を寄付し、ベン&ジェリー財団を1985年に設立。
 
企業から慈善事業への寄付(継続的に税引前利益の10%を寄付しようと考えていたところ、それでは企業成長への投資をしてもらえないと株式販売の引受業者がいうため、7.5%で妥協)が永久となる約束をしたのです。
 
ベン&ジェリーズ が永続的に社会に必要とされるのは、会社が慈善事業に関わり、会社の全員が起業時の想いを忘れることなく<世の中のビジネスのやり方>に真摯に向き合っている、その姿が同社のブランドイメージとなっているからなのです。
 
ベン&ジェリーズHP(企業理念)
 
 
 

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