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第139回「円安の逆風もものともしない強固なビジネスモデル」神戸物産

深読み企業分析

神戸物産の業績がこの10年の大幅な円安にもかかわらず絶好調である。同社の中心的な事業は全国に1,084店舗(2024年10月末)の業務スーパーをチェーン展開する業務用食品卸となっている。取扱商品の22-23%は輸入品となっており、国内生産する商品の原材料の多くも輸入に依存するため、円安は直接的、間接的にコストアップにつながる。特に同社のようにエブリデーロープライスを標榜する小売業にとって円安は大きなアゲインストのはずである。

それにもかかわらず、ドルが80円であった2012年10月期決算とドルが152円であった2024年10月期決算を比較すると、12年間で営業利益は8.1倍、年平均19.1%の利益成長を遂げてきた。

同社のビジネスの一つの大きな特徴は、国内に27拠点の食品加工工場を所有し、自社製造だからこそ可能な品質と価格、さらには他社にないユニークな商品を提供することにある。また、海外を見た場合、全世界に約500社の協力工場を持って、「世界の本物を直輸入」するというコンセプトで、本場の商品を提供している。その結果、同社のPB比率は34%台と高水準である。

同社のように加工食品において自社工場を持つ食品小売業はほとんどなく、家具のニトリや衣類のユニクロのような製造小売業を食品小売業で達成しているのが同社である。この国内工場戦略の特徴は、後継者難などもあって後継者がいない食品製造業を買収して、その製造設備と製造技術を手に入れることである。さらには、自社で小売業までつながっていることで、他社にはない独自の特徴的商品開発も可能となる。一例を挙げれば、買収した牛乳工場で新たに、形状は牛乳パックでありながら中身はプリン、コーヒーゼリー、ババロアといったデザートが入っている他社には全くないユニークでしかも安価な商品が供給できるのである。

同社ではこのような商品力に加え、食品小売業である業務スーパー以外にも外食や惣菜店を運営することで、さまざまな販売チャネルの需要に応じ、適切で効率的な製造・仕入れを行うことができるようにしている。その結果、無駄を削減したローコスト運営を可能にしているのである。

有賀の眼

小売業に関わらず、同業他社とは全く異なるビジネスモデルを持つことは、同質競争に陥らずに済むという圧倒的に有利な状況を生み出すことができる。その意味で、同社の業務スーパーは対食品スーパーとの差別化という点では、業務用と銘打つことで「安い」という印象を持たせることができる。加えて、商品自体も大容量商品に対して顧客の許容度は実に寛大である。

もっとも、この業務用と銘打った小売店舗は様々な業務用食材卸が参入した市場である。しかし、業務用食材卸はあくまでも業務用の顧客が主体であり、そこにこだわって、一般消費者の敷居がやや高かったことが、他社の問題点ではなかったかと思われる。それに対して、同社は業務スーパーと銘打ちながらも常に一般消費者の敷居が高くならないように意識してきたことが一つの勝因であろう。

もちろん、製造小売業という面は最大の強みであり、現状で業務スーパー内の戦いではすでに圧勝状態ではあるが、食品小売業全般との戦いの中でも将来的に生き残る業態の一つではないかと考えられる。

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