胃が、きりきりと痛むか、どーんと重くのしかかるか、しくしく小刻みに痛むのか…、胃の痛みのメッセージにも、いくつかのバリエーションがあります。
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そんな時におこる胃の痛みは、私がみるところ、胃の筋肉が「フリーズ」してしまっていることによるものです。
…フリーズって?
YAHOO辞書によれば、
【freeze】
1 凍ること。凍りつくこと。また、凍らせること。冷凍。凍結。
2 核凍結。核戦力を拡大せずに現状のまま凍結させようとする平和運動。
3 人に対して「動くな」と命令するときに用いる語。
とあります。
つまり、胃が緊張してしまって、動きが止まっちゃているという状態ですね。
皆さん、あまり想像しないと思いますが、胃の動きって、かなりダイナミックなんですよ。
図にした方がわかりやすいので、『Newton』という科学雑誌から、別冊「新・解体新書」に掲載されていた胃の消化の様子を、2つ拝借してご紹介いたします。
かなりダイナミックでしょ。
胃がカラッポな状態のときから、食べ物が入ってきて腸に送り出すまで、かなり劇的に胃は動いているんですね。まるで雑巾をしぼるように、食べ物は小腸へと押し出されます。
胃の筋肉をはじめ、臓器の筋肉は「平滑筋」という筋繊維でできています。これらが共同・協調しながら、それぞれの臓器のダイナミックな動きを演出しているわけです。
さあ、この筋肉が「フリーズ」すると、どうなるでしょう?
私たち自身、「動くな!」と言われて、しばらくカラダを動かさない状態を続けると、血流も悪くなるし、筋肉にコリが生じますよね。
この状態=筋肉の動きに緊張を加えている真っ最中は、感覚は麻痺しているので痛みも生じません。
でもカラダの緊張って、そんなに長くは続かないので、カラダは揺り戻し作戦によって、感覚に訴える症状を出します。正座なんかで、足に痺(しび)れが出てくるようなのが典型例ですね。
胃の痛みも、そうしたプロセスで生じます。
胃の痛みがあるということは、その前に、胃が「かちーん」とフリーズしてしまった状態にあったという証拠。それを取り戻すように、「今、緊張したよー」、「かなり恐かったよー」、とサインが出るのが、痛みなどの感覚症状なんですね。
私たちが食事をする過程では、イライラしたり、怒りっぽい状態で食べた食べ物は、胃を早く通過してしまうそうです(未消化物が残っちゃう)。
逆に、不安、恐れ、心配事などを抱えながら食べた食べ物は、胃からなかなか先へ進みません。そう、胃がフリーズしてしまって、あのダイナミックな動きが生じてこないのです。
皆さん、ちょっと想像してみてもらえますか?かちーんと固まったままの胃に、どんどん食べ物が詰め込まれる様子を。
柔軟性のない袋に、あれこれモノを詰め込むとどうなりますか?ぎゅっぎゅっと、ムリヤリ押し広げられた袋は、何だかもろくなりやすいですよね。
それに、かたまった胃の内部には、胃酸も、粘膜を保護する粘液も出にくいですから、ギザギザの食べ物が、胃壁を傷つけることにもなります。
不安、恐れ、心配という緊張状態のまま食事をするということは、そうしたリスクを背負うということを、ぜひ覚えておいてくださいね。
緊張状態では、痛みは生じない。でも、それが過ぎ去ったあと、胃はメッセージを送ります。
「恐かったねー」
「緊張したねー」
「どうなるかと思ったよー」
「いやいや、ちょっと傷ついたじゃないかー」
胃がキリキリ痛むときは、そうした緊張が短期的にカラダに起こったことの証拠。胃がどーんと重いのは、そうした食習慣が続いて「胃拡張」になりやすくなっている証拠。胃がしくしく痛むのは、傷ついた胃壁の状態がある証拠です。
いずれも、もとはと言えば、柔軟な胃の働きを止めてしまうような、「不安」、「恐れ」、「心配」が原因なのです。
もちろん、心配や不安ごとなどは、人間にとってつきものです。でも、せっかく「胃の痛み」というサインが出たときには、そのサインをしっかり捉えて、食事の仕方に注意を向けてみることが大切です。
今回、図で紹介したような、ダイナミックな胃の動きこそが、健康な胃の状態なんだよ、ってイメージしてもらえると、
・姿勢を正して、胃が楽に動けるようにする食事
・なるべく楽しく、心理的にリラックスしながら食べる食事
が、いかに大切かを知ってもらえると思います。
人間、いつもいつもポジティブにはいられませんから、私は、サインが出てからでいいと思っています。でも、そのサインができるだけ小さいうちに、カラダからのメッセージを受け取り、日常生活に工夫を加えてみること。
カラダからのメッセージを活用するって、そのような日々の積み重ねなんだと、私は思うんです。