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- 作間信司の経営無形庵(けいえいむぎょうあん)
- Vol.86 社長の得意技は両刃の剣
前回(Vol.85号)で、経営に死角があってはならないと書いたが、社長の「一番の強味」について、もう一点注意しておかなければならない。
社長の「一番の強味」「得意技」は、企業成長の最大の原動力にもなる一方、最大の弱点になる危険性をはらんでいる。野球の四番バッターの得意コースのすぐとなりに弱点があると言われることによく似ている。
先月、訪問した仙台のメーカー(売上130億)は、社長の技術開発力、製造力で伸びてきた会社である。
二代目ではあるが、強いリーダーシップと技術導入で、主力得意先の売上構成比も15%以下におさえ自信満々である。技術に強く、メーカーでもある関係で、工場内の設備は最新機が多く自慢のラインであることは、当然の結果である。
しかし、バランスシートは固定資産が膨らみ、借入金も多く、総資産も大きくなって、決して回転率の良い経営とはいえない状態だ。今は良いが金利の上昇があると、損益計算書(P/L)もとたんに痛んでしまう。
社内でも、社長が、最新機の導入を検討すれば、もう誰も止められない状況に近い。
確かに、これまで技術力で伸ばしてきただけに、一概に「NO」とはいえないが、得意分野だけに、人に任せる部分をつくるとともに、任せられる幹部の育成に社長自身が手を打たないと後の祭りとなってしまう。
経営環境が、順風の時はいいが、逆風の中でも、その得意技で乗り切ろうとすると、もっと危険な目に会うことも多い。