「仕事のすすめ方」
◆仕事を円滑にすすめる「コミュニケーションのスキル」◆
前回は、「言葉を添える」についてお話しました。今回は、「今年の新人社員の傾向と育て方について」をお話します。
今年の新人研修での印象は、昨年以上に全体として「おとなしい」と感じました。昨年入社の方々より、コロナ禍の中で最終学年三月までを過ごしてきたことが影響していると推察します。就職のハードルも高い中就職が決まった安堵と共に、これから頑張るという意気込みからか、今までの新人さんよりメモを真剣にとる姿が目立ちました。また研修の内容を理解しようとする熱量も多く感じました。ただ、もろにリモートで授業を受けてきた世代ですから、全体にコミュニケーション能力・発言するときの音声表現など、自分から発信する脳力は、「ソーシャル・ディスタンス」も大きく影響しているのか、例年の方々以上に課題と考えます。}
新人研修で学ぶ項目として、①挨拶②表情(笑顔)③身だしなみ④所作⑤言葉遣い、それに加えて「電話応対の仕方」があります。どれも必修ですが、「育て方」でお伝えしたいことが2点あります。
1.①の挨拶です。例えば『いらっしゃいませ』を言うとき「明るく」・「先に」・「工夫して」をポイントとしていますが、特に「工夫して」が難しいようです。何を言おうか考え込んで無言になったり、最初の「明るく」を意識しなければいけないところで、すでに「工夫して」で何を言おうかを考えながら言うため、残念ながら暗めの『いらっしゃいませ』になってしまいます。もちろん研修の中で「工夫して」の内容を「プラスαの具体例」を示して練習していただいていますが、是非現場で先輩の「工夫して」を新人さんの耳にシャワーのようにお聞かせください。
新人さんにとって難しいのは、例えば初めてのお客様に「いらっしゃいませ。今日は良いお天気ですね」、「いらっしゃいませ。お足元の悪い中お越しいただきありがとうございます」、「いらっしゃいませ。私どもの会社はすぐにおわかりになりましたか?」、あるいは初めてではないお客様には「いらっしゃいませ、〇〇様。過日は大変お世話なりました」、「〇〇様、いらっしゃいませ。その後お加減はいかがですか?」、「いらっしゃいませ。本日も素敵なお召し物ですね」など先輩には何気なく出せる「プラスα」の挨拶を耳で覚えさせてください。ある程度の期間は、とても上手に真似をすることでよいです。上手に言えたら褒めてください。「○○さん、先ほどのいらっしゃいませの『い』は昨日の『い』の音程より明るく出ていてよかったです」などのように褒めるためには先輩が細やかに新人さんを見守らないと褒める言葉を探せません。そして新人さんが成功体験を積み重ねられたら、新人さん自らの「プラスα」の言葉でトライすることを勧めてください。
2.②の表情です。こちらは昨年に引き続きの課題ですが、マスクをかけることが制服の一部といってもよい状況です。しっかり目元で笑えていないと、「笑顔の表情」をお客様に伝えることは出来ません。マスクをかけたままの新人さんの笑顔を映像で撮ってください。撮った自分を見て驚くのは、自分が思い描いた笑顔の半分も笑えていないことです。「見取り稽古」という言葉がありますので、先輩が率先して笑顔のお手本を示してください。念のため申し上げると、「石・岸・西」をマスクの下で一音ずつしっかり口を開閉して「イ・シ・キ・シ・ニ・シ」と言います。表情筋は連動して動きますから、目の形がニコニコマークの目のようになります。
①挨拶と②表情がクリア出来るか否かで、会社の印象はかなり変わります。今後コロナ禍の終息を視野に入れて、ウィルス対策優先で少なからず失ったコミュニケーション能力の一部を真っ先に取り戻す必要があります。日常の業務の中で、先輩が新人さんに素敵な挨拶や笑顔をお見せすることで、新人さんの今後に役立つ「コミュニケーションスキル」の基礎を社内でしっかり磨けます。