スーパーマーケットを経営する伊藤社長は、前回(第114回)で、賛多弁護士に、「物流の2024年問題」、そのうち特に荷主が取り組むべきことについて相談していました。今回も、前回同様、「物流の2024年問題」について相談しています。
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伊藤社長:賛多先生、前回のご相談はありがとうございました。
賛多弁護士:「物流の2024年問題」について理解できました?
伊藤社長:おかげさまでそれなりに理解することができました。物流事業は、適用が猶予されていた自動車運転業務に関して、来年4月以降は特例付きで時間外労働の上限規制が適用されることになります。そのため、1人当たりのドライバーが稼働できる時間が現状より減るため、物流が滞るのではないかと言われているということですね。
賛多弁護士:そのとおりです。
伊藤社長:前回は、「物流の2024年問題」に対する荷主としての取り組みについてご相談しました。私はスーパーマーケット会社の社長ですので、もちろん荷主として2024年問題に協力したいと思っていますが、そもそも、物流業界にはどのような影響があると考えられていますか?
賛多弁護士:「物流の2024年問題」は、法律的には、時間外労働の上限規制が適用されるため、1人当たりのドライバーが稼働できる時間が現状より減るという問題です。そのため、物流業者は、全体で現在と同じだけのドライバーの稼働時間を確保しようとすればドライバーを増員しなければなりません。したがって、物流業者は、ただでさえ人手不足というのに、さらにドライバー不足に陥るということになります。
伊藤社長:なるほど。そうすると、ドライバーの需要が増えて人件費が増額、それが運賃に転嫁されるかも知れないですね。
賛多弁護士:おっしゃるとおりの指摘がなされています。さらに、もし、1人当たりのドライバーの稼働時間が減ることにより全体の稼働時間も減ることになった場合、運賃が現状と同じと仮定すれば、物流業者の売上は減ることとなります。この観点からも、物流業者は、売上を維持するために、運賃を上げざるを得ないのではないかと言われております。
伊藤社長:運賃が増額すれば、われわれ荷主としても他人事ではありませんね。
賛多弁護士:そうですよね。もちろん、実際に2024年4月になってみなければ、業界の状況がどのようなるかは正確には分かりません。いずれにせよ、2024年問題への対応として、ドライバーが不足する物流業者はもちろん、荷主も運賃の増額等に対応するために、業務を効率化する必要があることは間違いないと思われます。
伊藤社長:前回の相談とつながりました。わが社でもどのようなことができるか検討してみます。ところで、私は一消費者としても物流のサービスを受けているのですが、どのようなことで協力できると考えられますか。
賛多弁護士:そうですね、それほど急ぐわけでもないのに急ぎの注文をしたり、商品が配達されたときに不在にしたりしていると、運送会社は業務が非効率になります。急ぎの注文をしない、配達されたときに確実に受け取るまたは置き配にする、というようなことで協力できるということは言われております。
伊藤社長:基本的には、物流のサービスを受けるときには、無駄を減らして効率的に行うということですね。
賛多弁護士:おっしゃるとおりです。荷主企業だけでなく、物流のサービスを利用する消費者においても、意識改革、そして、効率的な物流のサービスの利用が求められると思います。
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