皆さん、こんにちは。今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実践編として実例を挙げます。
【急所93】少なくとも10倍や10分の1など、桁違いを追求して新製品を造れ。(212頁)
相変わらず毎日暑い日が続いていますが、皆様いかがお過ごしですか? 私は比較的早寝早起きの生活をしているので気付いたのですが、朝の明るくなる時間はだいぶ遅くなって来ています。そして、夕方暗くなる時間も少しずつ早くなっています。8月も残りあと僅か、暦の上ではもうすぐ秋です。早く涼しくなってほしいですね。
さて、今回は新製品の開発について考えてみたいと思います。
製品の開発というと、なにか新しい発明やとてつもないヒット商品のイメージを持たれるかもしれません。しかし今回はそうではなくて、現場改善を通じてモノづくりのレベルを格段に上げ、その結果、ダントツの市場評価を受けて、ライバル商品との大きな違いを生み出すアプローチをご提案したいということです。
ところでリーマン・ショック後、モノの値段が格段に安くなったと言われていましたが、最近は少しずつ値段が高い商品も売れ始めているそうです。私もそう実感しています。これはどういうことかなと思っていましたが、先日ある方から、なるほどと思う説明を受けました。
それは、「値段が劇的に下がった当初は、激安値段でモノが買えるという、これまでになかった驚きがあって、消費者は喜んで安いモノに手を出した。しかし、消費者もだんだんと目が肥えてきて、最近は値ごろ感に従ってモノを買うようになっている。すなわち、安ければよいではなく、高くてもそこに新たな価値があれば買うし、安くてもそこに従来ほどの価値を感じなくなってしまえば買ってくれない」ということでした。
つまり、これからは、同じモノを作るのでも作り方を考えて、その商品に求められる価値をダントツレベルに高めることが、今の時代のモノづくりにおけるニーズだと考えるべきだと思います。そして、「ダントツなレベルの付加価値を付ける」ということは、いちいち説明しないでもお客様がひと目見れば、その違いが分かるようなレベルを言います。
たとえば埼玉県のB社では、工場の5Sを徹底的にお客様の視点でやるようになりました。入り口の製品ディスプレイは製品をただ並べていただけでしたが、改めて工場の特長をアピールする表示を分かりやすく追記したり、色使いや並べ方を工夫して、お客様の目を引くようにしました。
また、工程表示や棚の表示なども、お客様目線でひと目見てその内容が分かるように、大きくて読みやすいものに作り変えました。設備レイアウトは、不要な設備は廃却して完全に工程順とし、ひと目で流れが分かるようになりました。
すると、以前の様子を知っている方から見ると、全く別の工場に見えるくらいの大変化を実現しました。これが「ダントツレベル」です。B社の皆さんはそれを「工場のショウルーム化」と呼んでいますが、その結果、営業の方が新規のお客様を工場にお連れした時の成約率が格段に上がって来ています。
もうひとつ、「ダントツレベル」の良い事例としては、同じく埼玉県のN社における徹底的なリードタイムの短縮です。
これまで3日は必要といっていた生産リードタイムでしたが、約半分の製品は1日でできるようになりました。その結果、営業部門はライバルと比べて圧倒的な短納期をお客様に約束できるようになり、売り上げを伸ばしました。
これもリードタイムが3分の1ですから「ダントツ」です。営業部長のTさんによると、今のお客様のニーズは価格よりも納期に移っており、製造と協力して、何とか全製品を一日以内で作れるようにしたいということでした。
これらの事例以外にも、いろいろな切り口が考えられます。たとえば、もしお客様が望む品質レベルを既に達成してしまっている場合は、現在よりもずっと安価な材料を使って、同じ品質を生み出すことができないでしょうか?
コストに関しては、例えば電気代を半分にしても同じ量の製品を作ることができないでしょうか?電力不足の時代における一石二鳥の改善テーマです。
時代の変化は速いですが、そのスピードと同等かそれ以上のスピードでモノづくりを変えていきましょう。
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