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製造業

第316号 【急所44】仕事は、教え方まで含めて「仕組み化」せよ

柿内幸夫─社長のための現場改善

 今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実例を挙げて解説します。  

 【急所44】仕事は、教え方まで含めて「仕組み化」せよ。(108頁)

 日本では、少子高齢化により総人口の減少が始まっています。もちろん、企業で働く人も減ってくるということです。そして現在、景気の回復もあって、多くの企業では人手不足状態になりつつあると思います。
 
 その時に必要なことは
 ・人が採れなくても多くの注文をさばけるよう生産性向上をはかる。
 ・人が採れたら早く一人前になってもらうよう人材育成をする
ことではないでしょうか。
 
 D社は深刻な人材不足問題に直面していました。営業部門の驚異的な頑張りで、大規模な新規受注を達成することができたのですが、秋から始まる生産が達成できないかもしれないことが分かったのです。
 
 理由は工場の人員不足です。計算すると20人足りません。しかし20人が採用できたとしても、どうやってその人たちを教育訓練するかの段階で、大きな壁に直面してしまいました。
 
 理由は新規受注品の大半がD社にとって全く未経験の仕事であり、新人には任せられないからです。すると、これまでの仕事で経験を積んだ人たちが新製品を引き受ける必要がある。その結果、新人の人たちにこれまでやってきた仕事を学んでもらうことになります。
 
 すなわち、教育訓練を受けるのは新人だけでなく、ベテランも新たに教育訓練を受けなければならなくなったということなのです。予定の倍以上の教育を、生産が始まる秋までに終了しなければならない!
 
 加えて、D社は夜勤もあり夜勤者にどうやって仕事を教えるか? とか、教える内容をしっかり標準化しなければいけない! などと、できていないことが急にたくさん見えてきてしまいました。
 
 そこで、事態打開のアイデアを出すために、社長も含めて10人くらいでブレインストーミングをやることになりました。
 
 私も入ってみんなでホワイトボードの前に集まって事態打開のアイデア出しをしたのですが、はじめのうちは「標準作業書をどうやって効率的に作るか?」といった、これまでのやり方の改善が中心でした。しかし、それではどうやっても全く間に合わないことがすぐに分かりました。
 
 そこでこれまでのやり方にとらわれないで、とにかく結果が出るためにやれることなら何でもやろうとみんなの心が固まり始めたことからブレインストーミングも本格的になり、これまでの固定観念を乗り越えた言葉が出始めました。
 
 そこでの結論のひとつは、標準作業書ではなく、標準作業ビデオを作ることでした。ビデオというと昔でしたら食堂にある大きなテレビの前に集まってみんなで見る。しかしカメラアングルが作業者の後ろからなので非常に見にくいし、声がよく聞こえないといったイメージがあったと思います。
 
 しかし、最近のデジタル機器の進歩は、その機能と価格において急激に変化しているのですね。サイクリングが趣味で、毎週末に頭にウェアラブルカメラを着けてサイクリングのビデオ撮影を楽しんでいる若いSさんの発案で、リーダー作業者にそのカメラを頭に着けてもらい、作業内容をしゃべりながら作業をしてもらい撮影をしました。
 
 すると画像が作業者目線なので非常に分かりやすく、上手な説明が同時に聞こえるので本当に手とり足とりの教育訓練ビデオになりました。そしてそれを少し大きめのタブレット端末で見えるようにすると、見やすいし、何度でも簡単に繰り返せます。
 
 そして夜勤帯の人の教育でも、その人が行かなくても別のリーダーにそのビデオを使って夜勤者に教育してもらえます。
 
 そしてある程度できたら、教わった新人の作業をビデオ撮りして標準と比較することも簡単にできます。これまでだったらテレビ局の機材でなければできなかったようなことが、本当に身近な機器の活用で簡単にできるのです。インターネットで「ウェアラブルカメラ」と入れるとたくさんのカメラが出てきますが、機能は高く値段は低いです。
 
 次回は撮影した標準作業についてお話しします。
 
 
 

 

 

 

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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