東京・六本木での待ち合わせ場所といえば、「交差点の角の誠志堂前か、アマンドの前」と決まっている。
創業80年という誠志堂は書店、喫茶店、文房具店、更に万華鏡専門店、
最近は、古酒と沖縄料理の店「島唄楽園」(2F)を経営するブランド企業である。
大正末期に産声を上げて以来、 ブランド“誠志堂”を掲げて商売を続けている。
“誠志堂”を引き継いでいるのが、創業から三代目の西石垣文江さん(有限会社誠志堂マイヤーズの代表取締役社長)。
西石垣文江さんは商売の血が騒いだのか、女性企業家として、外食産業に踏み切った。
「大好きな沖縄料理と島唄をここで楽しんでもらおう」というのがコンセプ トである。
沖縄の文化や食を都心から発信する情報基地として、沖縄ファンの間で知る人ぞ知る有名な店である。
95年のオープンで12年目を迎える。料理、酒、音楽だけでなく、土、日には三味線教室も開催。
「明るく楽しい沖縄を疑似体験してほしい」というのが西石垣文江オーナーの弁。
同店の特徴は店内のスペースを活用して開催されるライブイベントである。
沖縄音楽をメインに、地元沖縄の出身アーティストを中心としたライブが毎週行われている。
月に10組から15組のアーティストが参加。週3回のスケジュールでライブが展開されている。
同社は独特の日本発の万華鏡専門店(1F)を15年前から開業している。
平成18年8月18日より「万華鏡バー マイヤーズ」というスタンディングバーの形式の店に変えている。
展示販売会も行うが、万華鏡博物館の様相を呈している。
両親が20年以上かけた万華鏡のコレクションをベースに展示・販売してい る。
西石垣文江さんの“沖縄大好き”から始まった「島唄楽園」も、また、両親の趣味から始まった
「万華鏡バー マイヤーズ」。いずれも商売のスタートは“好き”ということが動機である。
「好きこそものの上手なれ」という諺があるが、独特の店作りも原点は“好き”である。
独特の店づくりの原点はどこにあるのか。
西石垣社長は自分が受けたいサービスを提供することをスタッフに檄を飛ばす。
「受けたいサービスを心掛けよ」「企業は赤ちゃんと同じ。小さく生んで段々と大きく育てる」が大事だという。
育てるためには長い目で見守り続けなければならない。
ただし、「最初は寝る暇も惜しんで頑張ろう」というのが口ぐせである。
また、食べ物を提供しているだけに、「お母さんが子供に食べさせる感覚を忘れるな」と叫ぶ。
自然に、自然なものを使お うという気になっていくものだ。独特の視点を持つ企業の行方に期待したいものだ。
上妻英夫